「自分のアイデアの方が明らかにいいはずなのに、上司は自分の経験則に基づいて評価するから受け入れてくれない」「あそこの会社の社長は頑固だから、なかなか提案を受け入れてくれないな」―あなたが会計士や税理士の志望者で、企業に勤務した経験が少しでもあれば、自分の企画や提案が通らないことに悩んだこともあるだろう。しかし、世の中には上司や取引先の態度を180度コロリと変えてしまうビジネスパーソンもいる。
頑固な上司や取引先を”籠絡”できる人たちは何が優れているのか?巧みな話術や熱意もあるだろうが、最大のポイントは、提案書の中身も含め「説得力」があるかどうかだ。説得力のあるコミュニケーションをする下地として、近年は思考力の強化が注目されている。外資系金融出身の人気ブロガー、”ちきりん”さんが書いた「自分のアタマで考えよう」(ダイヤモンド社)がベストセラーになった。また、ビジネススクールで、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングといった思考力養成の科目を設置する学校もある。MBA(経営学修士)取得に向けたカリキュラムの中で、経営戦略やマーケティング、財務・会計、人事マネジメントなどの知識系科目をソフトウェアとすれば、思考系科目はそれらの知識を運用するためのハードウェアという見方もできよう。会計士や税理士がその専門性をいかんなく発揮できるため、また国家試験の論文を小手先のテクニックにとらわれずに突破するために、会計士・税理士の志望者は思考力を鍛錬することも必要なのである。
それでは、具体的な鍛錬はどのように行えばいいのか?前述の”ちきりん”さんは、知識にとらわれずに考えることを強調する。一例として、プロ野球ファンの年齢層の割合を示す1970年と2010年の2つの棒グラフを見て(データは架空)、プロ野球の未来はどうなるかを問いかける。データでは、2010年の方が高齢化がかなり進んでおり、「プロ野球の未来は暗い」と答える人も多いだろう。しかしプロ野球が衰退傾向にあるという報道などで得た知識を基に判断している可能性もある。一方で、プロ野球のない国の人にこのデータを見せると、「プロ野球の未来は明るい」と答えたという。その人は日本では、中高年の方が若者より資産や余暇を多く持っていることに着目し、逆の発想をしたわけだ。このことは知識や先入観を抜きに、目の前のデータだけを見て自分なりに抽出した要素を組み立てることの大切さを示したといえる。
このように、アタマをクールに回転させるには、目の前の材料だけで考えてみる経験を積み上げていくことも必要だ。さっそく今日から試験勉強の気分転換に、こうした思考力強化の本を読んでみてはいかがだろうか?次回は、実際の経営でこうした思考力をどう活用しているのかを紹介する。
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【シリーズ 資格プラス@】第3回 アタマをクールに回転させる方法(下)
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【シリーズ 資格プラス@】第1回 稼げる税理士、稼げない税理士