景気浮揚で一体となった世の中の期待がすでに「バブル」になっているのだろうか。 4月上旬で、安倍政権誕生から100日を経過した。しかし、その支持率が衰える気配が全くない。100日は、いわゆる「ハネムーン」期間で、支持率に変化の兆しが表れたり、メディアの姿勢も厳しくなったりすることが多いのだが、日経新聞の世論調査では、就任当初62%だった支持率は株価と並行するように上昇し、7割前後をキープしている。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」。周知の通り、「金融政策」「財政政策」「成長戦略」の“3本の矢”で成り立っている。まずはインフレターゲットなどの金融政策でマーケットの期待を膨らませ、円安・株高を推進する。そして、古典的な景気浮揚策ながら、「国土強靭化」計画にみられるように10年で200兆円の公共事業費を投入する。参院選で景気上昇ムードを追い風に与党で過半数を奪取、国会のねじれを確実に解消するためには、当面「金融」「財政」の2本の矢を繰り出し続けるだろう。
しかしアベノミクスの先行きを懸念する意見も少なくない。よく言われるのが「実体経済と離れたバブル経済の再来」という批判だ。日本の不景気が長引いた要因のひとつは、日本企業が韓国などの新興勢力に押され、グローバル競争で後退したためだった。そこで新たに世界に通用するサービスや商品を生み出す成長産業を育てることが出来るかが、真の景気回復につながるかどうか、というわけだ。実は、この3本目の矢を放つことで生まれるトレンドに乗れるかどうかで、これからの会計士、税理士の成否を分ける可能性がある。
アベノミクスを巡っては、実際、財政政策を主導する麻生副総理・財務相の名をもじって「アソウノミクス」とも一部では揶揄され、「結局、旧来型の公共事業バラマキ浮揚策に終始するのでは」という懐疑的な識者もいる。自民党の国土強靱化調査会会長を務める二階俊博総務会長が「土建屋に仕事を渡すためと、全く程度の低い批判を頂きながら耐えてきた」とマスコミに当たり散らしているし、成長戦略について「そもそも政府がベンチャーを生みだすことが無理」という意見すらある。しかし、不安を和らげるのが産業競争力会議の存在だ。成長戦略の青写真を描くため、小泉元首相の構造改革を支えた竹中平蔵・元総務相のほか、楽天の三木谷浩史会長、ローソンの新浪剛史社長ら気鋭の経営者も参加している。社内英語化を進めた三木谷氏らの意見を早速反映し、国家公務員試験での「TOFEL」導入が検討され始めたところをみると、一部で疑問視されていた実行力も予想以上にあるという期待もある。
産業競争力会議では、産業の新陳代謝の促進も課題にされている。つまり本来は市場競争で淘汰されるはずの企業が様々な規制や安易な支援で「ゾンビ企業」として生き残り、人材の流動化やベンチャーなど新たな企業の参入が阻害、結果として経済全体の活力が失われたというわけだ。たしかに民主党政権下で実施された中小企業金融円滑化法は規制の典型例で、ゾンビ企業を数多く生んだという指摘が絶えない。実は、こうしたゾンビ企業を陰で支えているのが、会計士や税理士だったりするのだが、老い先の見えた企業ばかりを相手に仕事をしていると、今後は生き残れなくなる可能性がある。
最近、若手の会計士がベンチャー企業のCFOとして経営に参画するなど、感性の優れた会計士や税理士が伸びる市場に積極的に身を投じている動きはご存じだろうか。今年後半にまとまる産業競争力会議の提言内容が国の成長戦略にどこまで反映されるか不透明な部分もあるが、産業の新陳代謝が今より進むのは間違いない。その時、あなたはゾンビ企業の救済に動き回るだけのイケていない人のままでいるのか、それとも日本の成長のエンジンになるような新興企業と一緒に仕事をするイケてる人になるのか――。会計士や税理士の若手や志望者の方にはそうした時代の流れを見据えていただければと思う。