2013年8月13日掲載
「ハルマゲドン」をご存じだろうか
「ハルマゲドン」という言葉を聞くと、最近の若い人は、「あぁブルース・ウイルスが主演のSF映画『アルマゲドン』のことね」と反応するくらいか。あるいは、90年代後半に10代だった今のアラサー世代なら、世界の滅亡を示唆した詩集「ノストラダムスの大予言」を巡る騒ぎを連想するかもしれない。一応、正確に語源を振り返ると、ユダヤ教などでこの世の終わりに起こる最終戦争の意味があるそうだ。
太平洋戦争終結から68年。8月に入れば、今年も平和を祈る関連行事が各地で行われたり、テレビで戦争もののスペシャルドラマが放映されたりするだろう。だが、そこで誰もが思い浮かべる戦争というのは、かつての「日本VSアメリカ」といったように国家間の激突が中心だった。
経済の世界でも「非対称戦争」が起きている、例えばアマゾンの場合
「戦争は私有財産と階級社会が発生して以後はじまったものであり、階級と階級、民族と民族、国家と国家、政治集団と政治集団の間の一定の発展段階における矛盾を解決する最高の闘争形態である」。毛沢東はかつて著書でそう戦争を定義したが、21世紀に入ると、軍事の世界では「非対称戦争」という言葉が焦点となってきた。国家VS国家という対称となる関係のバトルではなく、国家VS国際テロ組織のように複雑な構図をさしている。
実は「非対称戦争」の構図は経済の世界にも出現している。6月の主要8か国首脳会議(G8サミット)で話し合われたのが、グローバル企業に対する課税問題だ。インターネットの発達とともに、国境をまたぐ企業活動が当たり前になる時代。G8を発祥とする企業も事業規模が世界的になるうちに、税法上の拠点を税金が極めて安い国・地域(タックスヘブン)に移し、課税逃れが深刻になってきた。たとえば、よく槍玉に挙げられるアマゾンも日本では、千葉県内にある「倉庫」の税法上の扱いを巡って税務当局と紛糾中だ。日本の国税当局は、倉庫が課税対象である事業拠点と認定しているが、アマゾン側はあくまで倉庫に過ぎないという言い分で対立しているのだ。
G8サミットでは、世界全体で課税してから取り分を配分する構想も出たそうだが、結局、金融機関の情報を各国の税務当局で共有する仕組みづくりをするという「現状把握」の枠組み作りで精一杯だった。各国間では法人税の税率繰り下げで企業誘致合戦を行っているという矛盾を抱えており、問題は簡単ではない。
グローバル化する企業と課税逃れリスク
これをお読みの若手会計士、税理士の中には、グローバル化を見据え、英語力の習得などに意識を高く持っている方々もいると思う。すでに世界的なグローバル企業をクライアントに持つ事務所で仕事をしている人もいるかもしれない。近い将来、日本がTPPに加盟する可能性も考えると、自らの「太い客」としてグローバル企業は魅力的だし、これからの時代、稼げる会計人になるには、日本国内でいかに節税できるか指南できることも求められる。
しかし、行き過ぎた課税逃れに加担するリスクもある。そうしたグローバル企業は、日本国内でぼろ儲けをし、ごみ収集や水道、警察、消防などの公共サービスも受けているのに、「ショバ代」をほとんど払わない企業姿勢が長続きするのだろうか。そうした企業で働く日本人社員と同等に、会計士、税理士も“愛国心”を問われる時代である。