2013年10月24日掲載
バトル勃発! 日税連V.S. 公認会計士協会
公認会計士と税理士の間で、ことあるごとに議論が巻き起こっていた「業際問題」に、新たな展開がありました。平成25年9月28日の日本経済新聞朝刊に掲載された、日本税理士会連合会(日税連)による意見広告「日本の未来のために税理士法改正を!」の内容について、日本公認会計士協会からクレームが入ったのです。
問題とされたのが、公認会計士、弁護士に対する税理士資格の自動付与を廃止するよう求める部分です。日税連は、会計士、弁護士に資格を付与する際、「一定の能力担保措置を講じるべき」と主張。例として、会計士には税法の科目、弁護士には会計の科目への合格を条件とすることを挙げています。
これに対し会計士協会は、「主張・論拠には合理性がなく、国民・納税者に誤った認識を与え、加えて誠意を持って議論をしようとする信頼関係を損ねるもので到底容認できない」と、かなり強い口調で反論を加えています。
財務会計・管理会計と税務会計は異なり、税額を出すには税法に基づく調整が必要になります。試験組の税理士と比べて、公認会計士に税法の勉強量が少ないことは事実であり、主張には、一定の根拠はあるでしょう。
しかし、会計の知識がない「会計人」は論外としても、公認会計士は素人ではありません。特に税理士の中心業務となる法人税については、企業会計の深い知識が土台となります。
税理士の中にも、選択した科目やキャリアによって得手不得手があります。自身の得意分野は実務の中で培っていかなければならず、税制改正についての勉強も必須です。職業人として、不断の自己研鑽を行う資質があるか否かは、試験制度とは別問題です。
また、中小企業では、税理士が税務に限らない総合的なコンサルティングを行う相談役となっています。多くの公認会計士はその点で、中小企業の税理士ニーズに応えられる存在であると自負しています。実際に諸外国では会計士と税理士が分かれていないことがほとんどであることも考慮しておきたい点です。
納税者の利益を第一に考えた議論を
日税連の意見広告で興味深いところは、今回の問題が「業際問題ではなく、制度問題です」と、一般紙の読者には意味がとりづらい言葉で釘を指しているところです。現行の法制度による士業間の住み分けには、改正によってしか解決できない問題がある、ということを示唆しているのでしょう。また、税務への参入障壁を高くして、「業界益」を追求するための主張ではない、ことを強調しておきたいのだと思われます。
しかし、会計の専門家である会計士を、会計の知識が全く担保されていない可能性のある弁護士と同列にしているように見える今回の広告の内容は、いささか乱暴なように感じます。同じく会計・税法の知識にばらつきがある国税OB税理士の問題に触れていないのも気になります。会計士の間には、税理士の約11%を占める公認会計士を狙い撃ちするための改正案であると勘ぐる向きが強くあります。
日税連が、意見広告にある形で税理士法改正を主張するなら、公認会計士による税務に、具体的にどのような問題がありうるのか、はっきりさせるべきでしょう。会計士協会はその意見に対して、法改正によらずとも、自治的な内部研修の強化等で対応できるという根拠を示すことが求められます。まさに「業際問題ではなく」、納税者の利益を第一に考えた議論を、両士業間で進めていかなくてはならないでしょう。