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【コラム】 103万円の「壁」が無くなる日に備えよ

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女性は働くとバツゲーム!?

先日、子育て問題の論客としておなじみの駒崎弘樹さん(NPO法人フローレンス代表理事)が、刺激的なブログを書いていたのが目に留まった。何と言ってもタイトルが「『女性は働くとバツゲーム』税制の改正に、諸手を挙げて賛成する」だ。ちょうど年度末に政府が、現在は年収103万円以下なら控除の対象としている現行制度を見直し始めたことに関連しての話題。駒崎さんは「女性の就労にガラスの天井をはめる遺物」として、女性の就労意欲をそいでいる現行制度をとっとと止めるように主張している。

私は子供もいない一人暮らしなので、正直なところ配偶者控除のことに興味もなかったのだが、駒崎さんが去年の参院選でスタッフを務めた候補者のお弟子さんということで、知り合う機会も得た。以後、ソーシャルイノベーターかつオピニオンリーダーとして彼の発信内容は、時流をとらえる上で参考になるのでフォローしてきたのだが、今回を機に少々考えてみた。振り返ると、我が人生で配偶者控除を意識したのは、学生時代のアルバイト。中堅の進学塾講師をしていた際、夏期講習のようにまとまって稼ぐ機会があると、学生でありながら何十万と稼げてしまう。控除対象額を超えれば父親に迷惑をかけてしまうので、気を遣った記憶がおぼろげながら蘇ってきた。

女性就労シナリオはバラ色か?

制度見直しの背景にあるのは、3,800億円もの税収が失われていることだ。これは国の分だけで、駒崎さんの話では、地方税も合わせるとその倍の7,600億円はロスしているという。待機児童などの子育て政策の財源不足が4,000億円なので、単純計算ながら、国のロス分に匹敵するわけで、駒崎さんとしてはそのあたりの支援策拡充を要求している。

しかし、駒崎さんらの撤廃派には反対論もあって、経済ジャーナリストの萩原博子氏は「消費増税も含めると大増税」「女性の就労意欲を高めたいのなら、まず保育所の整備を」と主張。さらに、「過去の消費増税も、社会保障の充実と言いながら、結局は借金の穴埋めに使われた」と指摘する(SankeiBiz 2014年4月14日)。国家の性悪説に立った見方ではあるものの、増えた税収がちゃんと理念通りに使われるか政治力学的に不透明なのが我が国のガバナンスの欠点でもある。実際、消費増税も、もともとの社会保障拡充よりも公共事業投資に回っているという指摘が絶えない。そういう意味では、お二人の論点はある意味でそれぞれ正しいともいえる。

税理士はビジネスチャンス!?

さてことは税金の問題なので税理士はどう見ているのか。ググってみて税理士のブログもいくつか拝見したが、慎重な言い回しながらも、撤廃には前向きな意見のほうが多い印象だ。すなわち、財源確保や女性就労促進という駒崎さんの立場だ。「女性×税理士」という視点から探すと、全国女性税理士連盟は「配偶者控除廃止・基礎控除引き上げの要望書」を出して明確に撤廃を打ち出している。まだ政権が民主党だった頃の2012年8月のことで、そう意味では、割と以前から女性税理士のマジョリティーは撤廃派だったと見受ける。

しかし外野であれこれ論じていたところで、動いていく事態にどうコミットするか考えていかねば実利は無い。税務サービサーしてビジネスチャンスにつなげるか知恵を絞りたいところだ。

仮に控除制度が撤廃されても、会社員やパートは源泉徴収されてしまうので、個人顧客が急増というのは考えにくい。しかし皆、「不安」を抱く。そこで相談会やセミナーを開催するのは一つの方法だろう。もちろん源泉徴収する企業側も「不安」なのは同じ。パートを多く雇う企業は人事戦略が変わってくるかもしれない。政府内の論議を始め、今後の制度見直しの動きをにらみつつ、先回りしてクライアントに相談・提案しておきたいところだ。

(文/新田哲史=コラムニスト、記事提供/株式会社エスタイル)

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