消費税増税により、日々の買い物でも支払いが増えたことを感じる今日このごろ。このタイミングで大々的にTVCMなどでアピールし、注目されているのがヤフオク!です。「ヤフオク!なら消費税0%」というインパクトの強い言葉で、オークションの利用をアピールしています。
「個人間の取引」は何を意味する?
私もよく利用するヤフオク!ですが、あのCMを初めて見たとき、私に限らず多くの税理士が、「ん?」と手が止まったのではないでしょうか。
CMで、消費税が0%となるとして強調されているのが「個人同士の取引」。この「個人」の定義が問題となります。
消費税は最終消費者が負担し、納税するのは「事業者」です。個人間で不要品を売り買いする際は非課税となります。つまりCMでいう「個人」は、事業者の対義語。当然ながら個人事業主は含みません。CMでも「事業者との取引は除く」と注記しています。
国税庁の定義では、事業者とは、「個人事業者と法人をいい、「事業」とは、同種の行為を反復、継続、独立して行う」者です。消費税の課税取引となるか否かは、店頭販売かネットオークションか、販売するのが法人か個人であるかで決まるのではなく、この定義で決まります。
その点で、「ヤフオク!なら」との表現は、税理士からすると違和感がないことはありません。とはいえ、注記などを含めた全体で見ると、税法上間違っているとまではいえない、といったところ。CMの制作過程では、法令の説明と広告としてのインパクトのバランスを慎重に探ったことが伺われます。
「個人出品者」に注がれる税務当局の目
さて、ここで取り上げたいのは、このCM表現の是非ではなく、オークションサイトに出品する事業者にとって注意したいポイントです。
ヤフオクでは、事業主向けのカテゴリとして「ストア」があり、こちらの出品物については税額が表示されます。そして、個人のカテゴリでは自動的に消費税ゼロの表示が出るようになっています。
ヤフオクの出品ガイドラインには、「消費税の納税義務を負う事業者および消費税相当額を徴収する免税事業者」は、ストアとして出品することを順守事項としています。
しかし、個人出品者の中にも、税理士の目から見て「大丈夫なのかな」というものがないことはありません。出品履歴を見ると、商品を大量に仕入れて、何度も出品しているといった、事業の実態、規模があるように見える個人出品者が散見します。
税務当局は、サイトのカテゴリを見て課税するのではありません。その出品者が実質的に事業者であるかどうかを見ています。場合によっては「消費税ゼロ」の販売価格に消費税が含まれるとして課税処分を受けることになります。また、事業者が消費者に、消費税を取らないことを宣伝・広告することを禁止する表示規制に抵触する可能性があることにも十分に注意すべきです。
ネットでの販売を検討する事業者は増えています。オークションサイトはその際に力を発揮してくれる存在です。それだけに、影響力が高まるオークション取引への課税については、当局も注目しています。増税をきっかけにして調査の動きが活発化することも考えられるため、課税関係を整理しておきたいものです。