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なぜうまく行かない? 会計事務所の後継者採用

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なぜうまく行かない? 会計事務所の後継者採用

平均年齢は60歳を超えているといわれている税理士、その中の多くの方々が引退を考え始めています。全国に31,000件以上の会計事務所が存在しており、そのうちの大半で所長の高齢化が進んでいると考えると、非常に多くの税理士(所長)が後継者問題を抱えていると考えられます。
そんな中、会計業界の転職市場で存在感が出てきているのが「後継者候補」の求人です。「後継者候補」の求人は会計業界の高齢化と、後継者問題を解決する起爆剤になるのでしょうか?
今回の会計トピックスでは、近年増加傾向にある後継者候補求人と、採用の舞台裏について取り上げてみたいと思います。

後継者候補求人は増加しているものの…

上記の通り会計事務所における“後継者候補”を募る求人は、増加の一途を辿っています。
株式会社MS-Japanへ寄せられる会計業界の求人の中にも、後継者となり得る人材を採用したいというニーズは年々増えております。しかしながら、実際に後継者候補の人材を探している会計事務所の中でも、上手く採用が決まった事務所は意外と少なく、採用決定率も一般的なスタッフ職と比べて大きく下回る結果になっています。(※株式会社MS-Japan調べ)
中にはしっかりと面接を行った上で後継者候補を採用できたものの、入社後に徐々に関係性が悪化して早期退職になってしまったケースも少なくはないようで、後継者採用の難易度は高いようです。では何故、後継者候補の採用は難しいのでしょうか?

後継者候補の採用が難航する理由

実は後継者候補の採用活動が思うように進んでいない理由には大きく2つの要素があります。
その一つは所長が後継者候補に対して「過剰に期待をしてしまう」ことだそうです。所長は企業で言えば創業社長ですから、自分自身の信念や理想を持って今まで事務所経営をされてきています。それだけに、事務所への思い入れやお客様への関係性を考えると、容易くは引退が出来ないものなのです。現在も70歳を超えて現役として活躍している税理士の方々が多くいらっしゃいますが、実はそういった理由もあり「引退したくても引退するタイミングがない」のです。
そこで、後継者候補を狙って面接を受験される方も出てくる訳ですが、そういった方々は大体30代後半~50代前半くらいの年齢層であり、所長からすれば一回りも二回りも若い人材となります。やはり所長から見れば業界経験10年以上の人材でも、人格やスキルなどは未成熟と捉えられてしまうようです。従って、結果として候補者への期待が強いがために、十分な経験がある人材であっても採用には至らずというケースが多いようです。

後継者候補を希望する税理士側の思惑も採用を難航させる要因に

また、後継者候補を希望する人材側にも至らない点はあるようです。特に後継者候補の求人を希望する方の大半はもともと独立開業の意向を持っている方ですので、自分の好きなように営業し、自由な経営をしたいという方も多いものです。
そういった方々の中には、所長に気を遣いながら長い年月をかけて事務所を承継するということが億劫に感じる方もいるようです。「事務所は継ぎたいが所長の機嫌を取りながら我慢をするという期間は極力短くしたい」という気持ちが無いと言っては嘘になるでしょう。
つまり、事務所を継いでほしい所長は、候補者のスキルや人間性に対して高いハードルを設けてしまい、候補者としても上記のような要求を乗り越えるための人格的な成熟・鍛錬が進んでいないという「双方の温度感のギャップ」が採用成約率を下げる要因となっているのです。

会計事務所業界の後継者問題を解決するために

上記の通り、会計事務所の事業承継がうまく行かない理由には、所長の要求水準が高いという事と、引き継ぐ側の心得の足りなさ、という2点の行き違いが大きく関連しています。ですから、この後継者問題を解決するには、「所長」と「後継者」双方の意識が歩み寄っていく必要があるのです。
所長に関しては、後継者候補の世代や思考パターンを理解することに努め、自分の期待値を100%満たしていなくても多少の譲歩をすることが求められます。これは前向きな妥協とも言えるでしょう。今の候補者の人格やスキルが満点ではなくても、今後伸びると感じられ、且つ基本的な性格を認められる人材であれば、まずは歩み寄ってみることが重要です。
そして候補者側には、今まで所長がどのような思いで開業され、どのような苦労をしてきたのか、そして自分にはどういったことを求めているのかということを、真剣に考えていくことが求められます。自分の親と同じくらいの年齢層から事務所(会社)という貴重な財産を譲り受けるのですから、今まで以上に精神的・技術的な鍛錬を自ら能動的に行っていくことが求められますし、そういった意識を最初から持っておくことが重要でしょう。

(文/シニアコンサルタント)

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