会計業界において、転職はキャリア形成上のターニングポイントです。「スキルアップ」「ワークライフバランスの確保」「年収アップ」等、様々な動機・背景や希望があり、毎年多くの方が転職活動をされています。一方で、残念ながら希望通りの転職にならなかった方も多いのが会計業界。今回の会計トピックスでは、あえて転職失敗事例をご紹介し、転職活動の留意点などもご案内が出来ればと思います。
イメージだけの転職は時に後悔を生む ~取り戻せ! 自分の専門性~
【今回の失敗者】
Rさん、29歳/男、公認会計士
大手監査法人にて公認会計士としての華々しいキャリアをスタートさせたRさん。入社後、約4年が経過し、一通りの基本的な監査経験を積む中で、次第に外から監査をするよりも一般事業会社内で数値を作る側、管理する側の仕事がしたい!と感じるようになりました。
一般事業会社に経理職として入社し、今まで監査を通じて多くの会社を見てきた経験を、自社の数値を扱う上で活かしていこうと考え転職活動を開始。無事に内定を獲得した国内の大手一般企業に転職することを決意しました。
もっと事業全体を見渡すイメージで入社したものの・・・
当初のイメージ通り、一般事業会社への転職を成功させたRさんですが、現実はイメージとは異なっていたようです。
今までの経験を活用して、今度は数値を作る側でその能力を発揮し、さらに自分の能力を開花させる!!と思っていたものの・・・。実際入社してみると、自社数値の中でも細分化された一部の業務でかつルーティーンワークばかり。内容としても特別難しいものではなく、自身のスキルの停滞を感じる日々が続きました。
「もっと会社全体を見渡すことができると思って入社したはずなのに・・・、30代を間近に控え、本当にこのままでいいのだろうか?」Rさんは自身がイメージした将来像と現実の違いに戸惑い、次第に真剣に悩むようになりました。
企業規模やステージによる違いには十分に注意する
今回のミスマッチの原因は、様々な種類がある事業会社を細かく区分けせず、「一般事業会社」という大雑把な一つのカテゴリーとして認識し、転職先もイメージ先行で決定してしまっているところにあります。
今回のケースのような”大手企業”の場合は、経理人員も多く、業務を効率的に進めるためにも仕事を細分化しているのが一般的です。そもそも大手企業でのキャリア形成を考えた際に、「一社で長く務め、簡単な業務やルーティンワークでも辛抱強く続けて徐々に信頼や実績を残し、ジョブローテーションによってキャリアアップを図る」というキャリアの形成方法が一般的です。一方で、企業規模を一段階落とし、新興市場に上場しているような企業や中小企業の場合には経理+α(税務、経営企画等)等も業務に含まれている場合があります。今回のRさんはこのような業務を想像していたにもかかわらず、業務が細分化されている一般事業会社を選択されていることにミスマッチの原因があります。
最近では一般企業を志望する公認会計士の方も多く、転職で実際に一般事業会社に入社し、業務を経験してみるとやはり専門的な仕事がしたいと思うようになり、再び会計ファームに戻る方も多いのが現状です。
今一度、本来自分はどういう仕事が好きなのか、振り返ってみるのもいいかもしれません。
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(文/シニアコンサルタント)