会計業界において、転職はキャリア形成上のターニングポイントです。「スキルアップ」「ワークライフバランスの確保」「年収アップ」等、様々な動機・背景や希望があり、毎年多くの方が転職活動をされています。一方で、残念ながら希望通りの転職にならなかった方も多いのが会計業界。今回の会計トピックスでは、あえて転職失敗事例をご紹介し、転職活動の留意点などもご案内が出来ればと思います。
西へ東へ行ったり来たり、思った以上に忙しかった再生コンサル ~企業研究をしなかったが故、ワークスタイルのミスマッチ~
【今回の失敗者】
Fさん、32歳/男性、公認会計士
Fさんは大手監査法人で勤務していた公認会計士です。国内メーカーや専門商社等の財務諸表監査を経験していました。監査法人での勤務が5年を超えたころから、Fさんは次第にクライアントの成長や発展にダイレクトに関与できる環境へ移りたいと思うようになります。
その後Fさんは、以前から興味があった事業再生コンサルティングの分野を目指して転職活動を開始されました。
様々なキャリアの方々と切磋琢磨できる再生系コンサルティング会社に入社
Fさんが自身で調べて入社したのは、独立系の事業再生特化型ファームでした。
その事業再生コンサルティング会社は、設立者がBIG4系列のFAS出身であり、中小規模の再生案件を数多く手掛けているとのことで、当初のFさんの希望ともマッチをしていたため入社を決意したとのことです。また社内には、公認会計士のみならず、金融機関出身者やビジネスコンサルティング会社出身者など、多様な人材が在籍をしているという点にも惹かれたとのことです。しかし、入社後にFさんは理想と現実のギャップに苦しむようになります。一体Fさんはどのような点でギャップを感じてしまったのでしょうか?
まさか、こんなことに・・・仕事内容ではなく、ワークスタイルに大きなギャップが!
Fさんが入社後にアサインされた案件は、九州の中堅メーカーに対する財務リストラ案件でした。まだ再生コンサルティングの実務経験がないFさんは、上司(公認会計士)と共に現場の調査へと出向きました。最初は財務デューデリジェンス、再生計画の立案、経営陣への再生プランの説明などが主であり、Fさんもクライアントの存続に関わる重要な仕事と思い遣り甲斐を感じて仕事へ着手していました。しかし、入社して徐々にイメージとのギャップに戸惑うようになったそうです。それが、ワークスタイルに関するものでした。
実は入社したコンサルティング会社は地方の銀行と提携をしており、関東とは遠く離れた地域の再生案件をメインに扱っていたのです。上記の背景もあり、Fさんも当然の如く九州や東北、四国などの地方出張が多くなります。気づけばなかなか関東に戻る時間もなく、地方のホテルで宿泊する日々が続き、ついにFさんは「プライベートの時間がないのが辛い」と感じるようになってしまったのです。
本来はやりたかった仕事ができているにも関わらず、Fさんは徐々に退職を検討するようになったとのことです。
やりたい仕事だからこそ、しっかりとした情報収集を
Fさんは監査法人を出る前から事業再生に関する仕事をしたいと考えていました。転職活動開始当初から希望していた仕事だっただけに、このようなミスマッチになってしまったことは非常に残念です。Fさんはどのように転職活動を行えばよかったのでしょうか?
その答えは、やはり基本的なことですが、「十分な情報収取を行ってから面接を受ける」「面接時に働き方も含めて確認する」ということを徹底するべきだったのだと思います。
事業再生コンサルティングは、どのような提携先から仕事を受けるかによって、案件の特性や案件が生じるエリアも異なります。首都圏の地銀と提携をしていれば首都圏の案件が多くなりますし、地方の金融機関との提携が強固であれば地方の案件が多くなるというものです。
Fさんはクライアントの再生に尽力したいという思いを持って転職活動をしたものの、最後に大事なポイントを押さえきれていなかった為にミスマッチとなってしまったのでしょう。
“やりたい仕事こそ、慎重に情報収集する”ことが転職活動においても求められます。仕事内容や給与面以外にも、各種情報はしっかりと確認が必要であるという今回のケースを参考にして頂ければと思います。
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(文/シニアコンサルタント)
カイケイ・ファン ナビゲーターによるコメント