税理士の主要業務は、申告納税制度に関連する書類の代理作成です。しかし、申告を伴わず自治体から税額が通知される「賦課税」に関しても目を配っておく必要がありそうです。それを思い知らされる出来事として、たびたび紙面を賑わす、固定資産税の過徴収問題があります。
住宅用地の特例を40年以上不適用
最近の事件では、埼玉県の男性宅の固定資産税を、市が20年以上、過大に徴収していた問題があります。報道によると、税額が軽減される住宅用地の特例を市が適用し忘れたことが原因で過徴収となり、市が固資税など約490万円を返還する方針を示しました。
しかし、この額は過徴収した額の全てではない模様。この男性は40年以上その状態が続いていたと主張しています。しかし、返還請求権は20年で消滅してしまうため、市はそれ以上の返還を拒否しています。
固定資産税は、評価額の決定が複雑かつ不透明であり、自治体の職員に問い合わせてもほとんど要領を得ない回答をされることが多いようです。しかも税額がほとんど自動的に計算されるため、誤りに誰も気づかないということがどうしても起こります。
税理士は誤りに気づくことができるのか
この男性に顧問税理士がついていたかどうかは不明ですが、仮に税理士がいたとしても、固定資産税の額に誤りがあるという事態に気づくことができたかどうか、心もとない気がします。
固定資産税の通知には、計算方法などが具体的に記載されているわけではありません。また、税理士が不動産の購入時などに特例適用の申告に携わったのではないかぎり、不動産の実態について知る機会は限られ、税額に疑いを持つことも少ないでしょう。
顧問先企業の償却資産の固定資産税ならば、その評価額に注目する機会がありますが、個人の顧問先が所有する不動産に課されている固定資産税額の誤りを見落としてしまうことは、致し方ないとも思えます。
税額の検討、自治体との交渉業務を行う税理士も
最近、税理士事務所の業務として、固定資産税の評価額の見直しを行い、誤りがある場合、自治体へ掛け合い、還付請求を行うサービスが増えてきています。
特に長年所有する不動産に課される固定資産税について、通知書の税額をチェックし、各種特例の適用、あるいは相続税の評価のように、崖地や高低差、セットバック等、不動産の条件を見直すことで、長期にわたる徴収分の還付を受けられる場合もあるようです。
税制について理解のある職員が多いとは言えない自治体との折衝は、税務署の職員とはまた違った困難があるものと思われます。しかし、税の専門家である税理士は固定資産税の過徴収を防ぐ、最も心強い存在になりえます。新たな業務の開拓の意味でも、賦課税に対する認識を新たにする必要があるかもしれません。