「税理士の繁忙期はいつごろですか」とよく聞かれます。この質問に対して、とりあえず答えを出すことはできるものの、私はいつも、しっかりとした実感に基づいて説明できていないのではないか、という感覚にとらわれます。
12月から年末調整業務で仕事が増える
最も忙しいのが、法人決算業務が集中する4月、5月であることは疑いありません。ですから、私も冒頭の質問にはこの時期を答えることが多いのですが、この回答は、一般論にあわせて「置きにいった」感じがして、しっかり答えた気がしません。
税理士業務にもいろいろなものがありますので、税目や顧問先の状況により繁忙期が異なることももちろんありますが、それ以上に、「なんだかんだで、4月前から忙しい」ということがその理由です。
少しずつ忙しくなり始めるのが12月あたり。年末調整が始まり、1月以降も残務処理が続きます。また、年明けから法定調書、償却資産の申告、12月決算企業の申告業務があり、2月、3月の個人の確定申告、そして4月になだれ込んでいきます。
つまり、多くの税理士は12月から5月までの半年間が忙しく、6月から余裕ができるということになります。この答えは「繁忙期」について質問する人が期待する期間より長く、あまり煮え切らない表情を浮かべがちなので困りものです。
業務量と試験制度が求人時期を決める
さて、今はその税理士の長い繁忙期に入っていく時期です。そして、税理士業界では、12月は税理士試験の合格発表の月でもあります。その事情から、12月は5科目合格者、一部合格者の求人が一気に増えます。
年末調整や法定調書の業務は、忙しさはあるものの実務的にそれほど難しくはないものが多いので、経験が浅い人のOJTとしても最適です。本格的な繁忙期に入る前にキャリアを積むには良い時期と言えます。
しかし、3月決算を意識しなくてはならない時期は少し違います。この時期に実務者にやめられると、所長はかなり慌てます。求人は、不足する即戦力人材の補充という側面が強くなり、経験の深い人を選ぶ傾向が極めて強くなります。
求人は8月にも増えます。これも税理士試験の時期と合わせていることは言うまでもありません。この時期は、税理士業務が半年間の閑散期(と言っていいものか迷うのですが)に入っていますので、経験の浅い人を含めて、じっくり選ぶことができます。
動くなら今動いたほうが良い
合格したばかりの方、また実務経験に不安がある方は、12月にできるだけの活動をしておくことをおすすめします。この時期を逃して繁忙期に入ってしまうと、8月あたりまで、転職のチャンスがぐっと減ってしまうことになります。
税理士の人材市場は、独特の長い繁忙期、そして試験制度が大きく影響する特殊なものです。そして12月は、そのキーとなる月の一つです。「師走」だからということでもありませんが、士業として実りあるキャリアをスタートするために、走り出すことを考えてみてはいかがでしょうか。
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