税理士の求人動向
会計業界の中でも高いニーズを維持する税理士
税理士は公認会計士と比較され易い資格であり、公認会計士になれば税理士登録も出来ることから、公認会計士よりも一段下の資格として見られがちでした。しかし、近年の公認会計士を取り巻く環境の大きな変化で、会計事務所業界での就職・転職では圧倒的に公認会計士よりも優位な資格となったと言っても過言ではありません。とは言え、税理士が有利な場合もあれば、公認会計士が有利な場合もあり、その動向をよく理解しておくことが重要と言えます。
会計事務所業界における税理士の求人動向
会計事務所業界全体で見れば、税務業務を主体としている会計事務所の数が圧倒的多数となります。監査法人や監査を行っている公認会計士事務所は少数派であり、会計事務所の多くが税務顧問業を主体としています。事務所の規模や顧問先の規模にもよりますが、多くの事務所が記帳代行~月次決算支援~年次決算支援~税務申告といったスタンダードなサービスを提供しています。所得税申告や相続・贈与といった個人向けの業務は、尚更、税務知識や実務経験の有無が大きく問われる業務となっています。
そのような流れから、税務を主体とした会計事務所では、公認会計士の採用は極めて少なく、即戦力の税理士、実務経験を有する税理士科目合格者、資格はなくとも会計事務所での実務経験を有する方が最も市場で評価される人材となります。求められる経験を年代別にまとめると、下記の通りです。
- 20代…学歴や税理士試験合格科目数から推察されるポテンシャルの高さ
- 30代…税理士試験の合格状況に加え、実務経験の内容
- 40代以降…税理士資格の有無、実務経験内容に加え、部下のマネジメント経験、何かしらに特化した実務経験(スペシャリティ)
今の自分は会計事務所業界の転職市場からどのように見られているのか、どこに価値を持っていると勝負できるのか、といった自己分析が非常に重要であり、それが市場のニーズとずれないように常に注意をしておくことが重要です。
一年間を通じた季節的な変動要素の話をするならば、1年間の前半となる1~6月は個人確定申告や法人決算・申告の最繁忙期ということもあり、離職中の即戦力人材の採用ニーズが高まり、8月には税理士試験後から若手ポテンシャル人材の採用が行われ、12月の税理士試験発表後には、実務と資格の両面のバランスが良い人材採用がピークを迎え、また、繁忙期を迎えていくというのが典型的な年間採用サイクルとなります。
また、最近の業界全体のトレンドとしては、地方を中心に代表税理士の高齢化が進み、後継者不在で困窮している事務所が多く見受けられるようになってきました。その流れから、後継者候補の求人や事業承継の相談も増えてきており、今後、Uターン就職の需要が増加する可能性が非常に高くなっています。
一般企業における税理士の求人動向
会計事務所業界全体では税理士が優位である一方、一般企業の経理部門やコンサルティング会社等では、税理士に比べ公認会計士が優位な印象となっています。
一般企業での経理業務は、税務ではなく会計がメインとなる為、上場企業が会計系有資格者を採用する際は、公認会計士のニーズの方が高くなります。しかし、税務申告書の作成を内製化している企業や、税金計算が重要視されている不動産系企業、金融機関等では税理士のニーズは非常に高いのも事実です。一般企業への転職を検討されている税理士の方は、その企業にとって税務がどの程度重視されているのかという業界研究が重要になります。
コンサルティング業界における税理士の求人動向
コンサルティングファームにおいても、一般企業と同様に会計・財務といったキーワードが重視される傾向にあり、公認会計士の方がやや優位な転職マーケットとなります。ですが、M&Aや事業承継では組織再編税制等のテクニカルな税務が重要ですし、大手企業を対象にしたコンサルティングにおいては、国際税務や連結納税等の上級な税務スキルが問われる場合も少なくありません。ここでも重要なのが、ターゲットにしているコンサルティング会社がどのような業界の企業をお客として、どのようなコンサルティング業務を行っているのかという点を見極めることです。
自身が税理士としてどの分野のスキルを発揮することが出来るのかを分析し、自分で自分を売り込んでいく心意気が重要です。
カイケイ・ファン ナビゲーターによるコメント