フランス通信社によると、今年6月フランス議会はアマゾン・ドットコムなどのインターネット小売大手が書籍を無料配送することを禁じる法案を可決しました。フランスには独立系の小規模な書店が数多く、これらを保護するのが目的のようです。アマゾン・ドットコムはこれに対抗して、送料をたったの1ユーロセント(日本円で1.3円程)にする措置を発表しました。ところで、アマゾンは注文後30分で配達できる無人飛行機での配送サービスを計画しているそうです。その勢いはとどまることを知らず、町の小さな書店は苦戦を強いられるばかりです。そして、その差は企業規模によるものだけではありません。アマゾンはそのインターネット販売を展開する国々でほとんど法人税を納めていないのです。
140億円の追徴課税
アマゾンは日本では2009年7月に本社機能の一部が日本にあるとして140億円程度の追徴課税処分を受けました。米国企業であるアマゾンは日本に子会社を持っていますが、この子会社はあくまで物流機能だけを担い、日本の顧客がAmazon.co.jpのサイトで買い物をした場合は米国のアマゾンから直接購入しているのです。そのため、米アマゾンは日本には恒久的施設(PE)を持たず、日本の法人税の納税の義務がないというのがアマゾン側の主張です。それに対し東京国税局は、その日本の子会社が米アマゾンのPEにあたると主張しました。
その争点と決着は・・・
PEとは事業を行う一定の場所と定義されています。具体的には支店や工場、倉庫業者の倉庫、また一年を超えて行う建設現場、そして契約締結の権限等を有する代理人などが挙げられます。しかし、単なる商品の保管、引渡しのための施設や補助的な活動を行うことのみを目的とする場所はこれには含まれません。
物流業務を委託している日本子会社は商品の保管と引渡しのための施設としてアマゾンが使用しているにすぎず、PEにはあたらないと考えたのです。インターネットビジネスのPE認定はサーバーの所在地が一つのキーになりますが、アマゾンは当然ながら日本にサーバーを置いてはいなかったようです。
しかし、国税局は米アマゾンの機器類が日本の物流会社に持ち込まれ使われていたこと、物流会社が米アマゾンから指示や許可を受けて業務を行っていたこと、委託契約外の米アマゾンの業務を物流会社が行っていたこと等を挙げ、この日本子会社が米アマゾンのPEにあたると主張しました。
PEがないところには課税しないというのが租税条約の基本原則です。しかし一旦PEが認定されるとその企業の所得のうちPEに帰属する所得について課税されてしまいます。つまり、アマゾンの日本の顧客への販売から生じる所得が課税されてしまうことになるのです。
これを不服としてアマゾンは日米両国の当局による相互協議を申請しましたが、2010年9月、日米相互協議の結果は国税庁の大負けでした。アマゾンは商品の多さや配送スピードの速さでとても使いやすいオンラインショッピングサイトですが、自分の買い物から出た利益が日本にほとんど落ちていないことを知ってしまうと個人的には思わず日本の会社を応援したい気持ちになってしまいます。
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