公認会計士の求人動向
数年前に比べ、公認会計士の転職市場には大きな変化が
公認会計士は税理士と比較され易い資格であり、公認会計士は税理士登録も出来ることから、公認会計士の方が一段上の資格として捉えられがちでした。しかし、近年の公認会計士を取り巻く環境の大きな変化で、公認会計士の市場価値にも大きな変化が生じています。
ひとことで言うと、公認会計士が転職市場に激増し希少価値が失われてしまったことで、ただ「公認会計士だから」というだけでは転職が難しくなったのです。「高い英語力がある」、「IFRSに精通している」、「デューデリジェンスやバリュエーションの経験がある」といったように、自身の強みをしっかりと持ち、転職マーケットとのマッチングを図ることが重要となっています。
会計事務所業界における公認会計士の求人動向
将来的に独立を目指す公認会計士の多くが、税務を中心としている会計事務所への転職を求める傾向が強くなっています。しかし、税務系の会計事務所の多くは税務未経験の公認会計士を採用する位なら、実務経験のある税理士科目合格者を採用した方が良いと考えています。その理由は、給与水準からみて費用対効果が良いからです。会計事務所での実務経験が3~5年ある税理士試験科目合格者であれば、年収400万円前後で十分に採用が出来ますが、公認会計士を採用するとなると、仮に同等の年収を提示したとしても税務分野では未経験者とほぼ同等レベルであることから、即戦力の価値がないと判断されてしまうのです。
しかし、上場企業や大企業の税務顧問を行っていたり、税務顧問業務+コンサルティングを行っていたりするような会計事務所であれば話は違います。上場企業や大企業は中小零細企業とは全く異なる性質を持っており、逆に公認会計士が得意とする分野の業務が多く含まれます。スポットで財務デューデリやバリュエーションを行っていたり、企業再生やM&Aアドバイザリー等を行っていたりする会計事務所では、優秀な公認会計士を必要としている場合が多くなります。
つまり、会計事務所業界における公認会計士のニーズは、その事務所がどのような顧客にどのようなサービスを提供している事務所なのかという分類により、大きく異なるのです。但し、前述の通り、大半の会計事務所が中小企業の税務主体の事務所である為、公認会計士を求めている会計事務所は全体としては少数です。更に税務や会計の知識のみならず、対人折衝力や提案力等、複合的な観点から選考が行われる為、結果的に会計事務所や税理士法人への公認会計士の転職はハードルが高くなっています。
コンサルティング業界における公認会計士の求人動向
会計事務所・税理士法人への転職と比較すると、コンサルティング業界における公認会計士ニーズは、引き続き高い状況であると言えます。ひと言でコンサルティングと言っても様々であり、公認会計士がマッチする業界はやはり会計系のコンサルティング業界がメインです。FAS系のアドバイザリー会社、M&Aや企業再生のコンサルがその中心となりますが、制度会計系のコンサルティングや、IT・戦略系のコンサルティング、金融系シンクタンク等でも公認会計士のニーズがあります。しかし、誰もがその選考を通過出来るかというと、当然のことながらそうではありません。昨今、コンサルティング業界で必要とされる選考基準のトレンドは、年齢別に下記のような特徴があります。
- 20代…監査法人での実務数年、終了考査合格必須、TOEIC最低700点以上
- 30代…監査法人以外での実務経験、何かしらのスペシャリティ、マネジメント力、英語力
- 40代以降…マネジメント力、営業力、経営能力
簡単にまとめるならば、20代は英語力とポテンシャルの高さが重要、30代は即戦力となりうる経験とマネジメント能力、40代は自ら仕事を作り出し、統括する能力が求められると言えます。
一般企業における公認会計士の求人動向
会事務所業界やコンサルティング業界に比べ、採用のハードルがやや低いのが一般企業への転職です。一時のピーク時に比べ、求人件数は落ち着きましたが、依然として大手企業を中心に経理要員、財務要員、内部監査要員等として、公認会計士の採用ニーズは存在します。
このトレンドは、J-SOX導入時から始まり、IFRS対応や海外進出、海外連結対応等へと発展し、多くの公認会計士が一般企業へ転職していきました。その流れの中で、既に公認会計士の採用が成功し、そのニーズが落ち着いている企業も多いのですが、今まで公認会計士に手が出せなかった新興上場企業やベンチャー企業、大手子会社等が公認会計士のポテンシャルの高さに着目し、積極的な採用活動を行うようになっています。
国内トップクラスの超大手を狙うタイミングは、やや去ってしまった感は否めないものの、これからの成長が期待される有望な企業でチャレンジするというフィールドは大いに開けていると言えます。単なる大手志向・安定志向の人材は必要とされておらず、これからの新興マーケットに果敢にチャレンジしようという、気概のある公認会計士が世に求められているのです。
また、企業規模を問わずグローバル化が進んでいることを踏まえますと、中級以上の英語力も必要とされるケースが増えているということは念頭に置いておくべきかと思います。
カイケイ・ファン ナビゲーターによるコメント