皆さんの中には一生に一度は海外で働いてみたい、暮らしてみたいと思っている方は多いのではないでしょうか。日本は島国ということもあり、都心では外国の方を見かけることも多いですが、諸外国と比べると在住の外国人の割合は圧倒的に少ないです。日本人ばかりの環境を離れて外国に飛び込んでみるというのも、長い一生で一度くらい経験してみてもいいかもしれません。
外務省の統計を見ると、海外に住む日本人の人口は年々増えており、現在は100万人を超えています。そして国別にみると圧倒的に多いのがアメリカです。現在、40万人を超える日本人がアメリカに住んでいます。ただ、海外に住んでみたいと思ってもそう簡単にはいきません。今回は、会計や税務の専門家としてアメリカで活躍するにはどんな方法があるのか、そのいくつかの方法を見ていきたいと思います。
ご存じUSCPA(米国公認会計士) アメリカで会計・税務をやるには必須です
日本でも試験を受ける人がかなり多いUSCPA試験。ご存じの通りアメリカの公認会計士試験です。アメリカでは税理士の資格もありますがあまり一般的ではなく、税務に携わる人も会計に携わる人もUSCPAの試験を受ける人が圧倒的に多いです。
また、日本の会計士試験を受ける感覚とは違って、アメリカでは士業を行いたい人だけでなく、一般の会社の経理部門の人も多くが受験している試験です。どちらかというと広く、そして深すぎない程度に会計・税務・監査・ファイナンスなどの知識を習得することを目的としている人が受験することが多いようです。
日本人としてアメリカで会計または税務に携わるなら、武器としてUSCPAの試験に合格しておくことは大切です。
ビザの取得 ~留学編~
次に学位のお話です。留学を足がかりに、卒業後アメリカで就職するというのは最も可能性の高い方法かもしれません。外国人が大学や大学院に留学すると、卒業後にOPT(Optional Practical Training)という1年間の就労の許可をもらえます。これはその取得した学位と関係のある分野での仕事で適用されます。アメリカで働くにはビザが必須ですが、就労ビザは毎年4月にその年の募集を始め、申請が通るとその年の10月から有効になります。
卒業後、就労ビザが有効になるまでの数カ月、内定をもらった会社で働くためにOPTはその空白期間を埋めてくれます。さて会計や税務と関係のある学位と言えばまずは会計学です。これは大学にも大学院にもある課程で、広くたくさんの大学にあります。そして税務に関しては大学院にしか課程はありません。Master of Taxationは1~2年で取得できる修士課程で、連邦税法を幅広くカバーしています。
連邦税法を学ぼうとするのはやはりアメリカ人がほとんどで、他の課程に比べて留学生の比率がとても低いため留学生は大変ですが、日本人としてアメリカで働こうとする時に他の人と差別化できるいい武器になります。
またもう一つの税務の課程はLL.M.と呼ばれるもので、ロースクールの中にあります。ロースクールはご存じのように、法科大学院で、J.D.とLL.M.という課程があります。LL.M.はJ.D.を修了した人や既に自国の法学部を卒業した留学生が入るさらに上の課程で、様々な法律のなかで専門的に学びたい分野を専攻します。例えば会社法・国際法・刑事民事訴訟法です。この中に税法もあります。税務の学位としてはMaster of TaxationとLL.M.の税法が最高峰と言えます。
日本人として日本語と英語ができ、専門の学位を持ち、日本の会計・税務の知識を持ちながらUSCPAまたはアメリカ司法試験合格者であるという武器がそろっていれば、現地での就職に非常に有利です。その全てを一気に取得できるのが留学と言えます(ただし、試験の勉強は学校の授業と重なりますが。合格に向けてがんばりましょう!)。
ビザの取得 ~その他~
最後にその他の方法です。大手会計事務所などでは交換プログラムがあり、日本の大手会計事務所で働いている人は、選ばれれば期間限定で同じ事務所の海外の拠点で働くことができます。また、アメリカには外国人に永住権を与えてくれる抽選システムがあり、毎年今くらいの時期に抽選が行われます。これに運良く当たれば永住権を取得できますが、宝くじを当てるような確率です。
アメリカをはじめ外国で働くにはビザが必要です。永住ビザ・駐在員ビザ・就労ビザ・インターンシップビザ等、色々な選択肢がありますが、ビザの取得も外国での就職活動も簡単なことではありません。しかし、学位の取得など比較的入りやすい入り口が必ずあります。長いようで短い一生、思い切って挑戦してみるのも面白いかもしれませんよ。
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