税理士が実務であまりお目にかからず、馴染みがない税目に酒税があります。私もご多分に漏れず、酒税について調べる必要にかられる機会はなく、ただひたすらに払い続けています。しかし、このところ酒税、とくにビールに関する気になるニュースがいくつかあり、興味が強くなってきています。
発泡酒、第3のビール税率統一化の動き
取り上げたいのは、まずビールと発泡酒、そして「第3のビール」に関する税制改正の議論です。
ビールは醸造酒の中で、飛び抜けて高い税率に設定されています。ビールは定義上、麦芽とホップ等のみで醸造したもの。税率は1キロリットル当たり22万円で、350ミリリットル缶で77円程度です。麦芽比率が25~50%未満だと「発泡酒」の一つとなり、税率は1キロリットル当たり17万8,125円(350ミリリットル缶約47円)、原料の麦芽が50%以上ならビールと同じ税率となります。
そして、第3のビールは、主原料に麦芽を使わないものは「その他の発泡性酒類」、従来の発泡酒に麦焼酎などを加えたものは「リキュール」と分類され、それぞれ1キロリットル当たりの税率は8万円、12万円となっています。
この複雑な税制について、政府は、ビールの税率を下げ、第3のビールの税額を引き上げ、発泡酒と第3のビールの段階的な統一を視野に改正を行う方針を示唆しています。
海外からもビール税制に疑問の声
ビールの税制問題ではもう一つ、経済連携協定(EPA)交渉で、日本の酒税法が「非関税障壁」であるとの指摘がなされたと報道されました。問題となったのは「ベルギービール」です。
ベルギービールの一部は、風味付けに香辛料やハーブなどを使っています。日本の酒税法上、これは「発泡酒」として扱われます。しかし、50%以上の麦芽比率のため、税率はビールと同じです。
日本のビールと同じ税率なら、金額上の参入障壁にはなりませんが、ここで指摘されているのは、ビールとして作り、ビールと同じ税を納めているのに「発泡酒」と呼ばれてしまう表示上の問題。確かに割を食っているようにも感じられ、ビール大国のベルギーとしては黙っていられないのも理解できます。
これらの問題からは、「そもそもビールとはなんなのか」という定義、「麦芽の量によりなぜ特別の税が課せられるのか」という税制の根拠を、租税論、そして酒文化の面から議論する必要性を感じます。
「ビール以外すべて増税」の可能性も?
ビールの高い税率については、明治時代に酒税制度ができた時に、ビールが「ぜいたく品」であったことが影響しているものと考えられます。しかし、今やビールは大衆的な飲み物。税率を下げ、ほかの酒に近づけていく必要があると思います。
しかし、なぜ発泡酒や第3のビールの税率を上げるのか、という話は別の問題として考える必要がありそうです。これは「減税分をどこかで増税する」という財政上の要請とみてよいでしょう。
第3のビールの分類である「その他の発泡性酒類」の酒税は「果実酒」と同率、「リキュール」は「清酒」と同率です。発泡酒等の税率が低すぎると感じられるのは、あくまでビールと比べているからです。発泡酒等の税率が上がれば、他種目の税率との整合性はどうするのでしょうか。結局「ビール以外すべて増税」となることも考えられないこともありません。
お酒の席は、古今東西、常に議論の場でした。私を含め、酒税の「高額納税者(正確には負担者)」の皆様は、この問題について自らの考えを持ち、理論武装しておきたいもの。とくに、酒席に財務省の方がいらっしゃる場合、議論してみてはいかがでしょうか。
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