会計業界において、転職はキャリア形成上のターニングポイントです。「スキルアップ」「ワークライフバランスの確保」「年収アップ」等、様々な動機・背景や希望があり、毎年多くの方が転職活動をされています。一方で、残念ながら希望通りの転職にならなかった方も多いのが会計業界。今回の会計トピックスでは、あえて転職失敗事例をご紹介し、転職活動の留意点などもご案内が出来ればと思います。
入社後に雇用条件を変えられた!? 職員を使い捨てにする会計事務所に入ってしまった典型的な失敗例
【今回の失敗者】
Sさん、40歳/男性
税理士試験5科目合格(簿記論 財務諸表論、法人税、所得税、相続税)
税理士資格を取得したSさんは、以前から挑戦したかった資産税業務に取り組むべく相続・事業承継サービスに強い会計事務所に転職をしました。
しかし、その事務所は業界でも度々ブラック事務所として噂にあがる会計事務所だったのです。
相続税に合格!遂に相続に強い税理士になれる
Sさんは長年、税理士試験の勉強に取り組んでいましたが、最後の科目である相続税法になかなか受からずにいました。相続税と言えば税理士試験科目の中でも難関の科目、合格率も決して高くはありません。そんな中、Sさんは4回目の受験で遂に相続税に合格。税理士有資格者になったタイミングで以前から興味があった資産税分野への転職を決意されました。しかし、資産税経験のないSさんの転職活動は難航。苦戦の末、やっとの思いで内定を頂いた事務所へ二つ返事で入社を決めてしまったのでした。
入社した翌日に雇用形態を変更され、不安な日々が始まった
Sさんが入社をされた会計事務所は、信託銀行と提携をしているため相続申告の案件を獲得するに十分なネットワークを有していました。確かに事務所で手掛ける相続案件数は多く、Sさんの希望ともマッチしているかのように見えたのですが、実は信託銀行へ営業をして実際に申告書作成まで対応する方が1名しかいない事務所だったのです。その上、Sさんは前任者が退職をするタイミングで採用をされた「後任者」だったのです。更にSさんが驚いたのが、入社した事務所は営業ノルマが高く、そのノルマを達成できないと年収も下がるというフルコミッション型の事務所だったのです。
出社二日目、Sさんは事務所の代表先生から衝撃的な言葉を聞くこととなります。
「君は営業が出来るか未知数だから、最初は契約社員ね。」
こうして、Sさんは入社早々に雇用条件を変更されてしまい、約束された年収も全く意味のない数字と化してしまったのです。
未経験の業務にチャレンジする際には教育体制の有無も確認しましょう
今回のSさんの転職失敗事例は内容としても惨く、事務所側の仕打ち自体が許されることではありませんが、一方で同様のケースが生じる可能性も0ではありません。むしろ、資産税や事業承継、M&Aなどスポット案件の比率が高い事務所は、能力主義・実力主義の色合いが濃く、一般的な税務顧問型の事務所よりも明確な成果を求められる可能性は高いとも言えるのです。
但し、上記のような事務所の多くは専門分野に強い税理士が複数名在籍しており、今回のように無茶な仕事の振り方はしないのが一般的です。しかし、悲しいことにブラック会計事務所の中には、極限まで人件費削減を進めた結果、営業~申告書作成まで一人で担当させるような事務所も存在するのです。(一人に任せること自体がブラックなわけではないのですが…)
未経験業務にチャレンジされる際には、実際にどのような業務から任されるのか、そして誰からノウハウを教えて頂くのか等、しっかりと把握してから入社するべきでしょう。
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