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【コラム】吉本興業にみる、減資のメリットとデメリットは?

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【コラム】吉本興業にみる、減資のメリットとデメリットは?

7月28日、吉本興業が資本金を125億円から、9月より1億円に減資すると発表しました。同社の広報担当者は、124億円の資本金を取り崩し、資本準備金へ回すことで、財務体質を改善し、中長期的な視点で、資金を効果的な投資に振り向けていくとのことです。

今回の減資で、吉本興業は中小企業とみなされ、法人税などの負担が軽減されるため税務上の恩恵を受けることになります。今回は減資におけるメリットの詳細だけではなく、デメリットも見ていきたいと思います。

減資のメリット

会計面では、欠損金と資本金を相殺するため、資本の部は財務状態が良くなったように見えます。また、減資により1株あたりの利益が増えるため、配当が増える可能性もあり、株式としては魅力が高くなります。

税務面では、減資は法人税、法人事業税、法人住民税に影響します。法人税法上、吉本興業は今回の減資で資本金1億円以下の中小企業として扱われるため、法人税の年所得800万円以下の部分については、通常の法人税率23.9%ではなく、15%が適用されます。

また接待交際費の損金算入の上限が拡大となり、減資前の大企業のときは「接待飲食費」と呼ばれる、事業に関係する取引先・得意先(見込みを含む)への接待や贈り物などに支払う費用の50%を損金に算入する方法であったのが、中小企業になると年800万円までの損金算入との選択制になります。

そして法人事業税では、赤字でも税金を納めなければならない外形標準課税の適用がなくなります。法人住民税では、資本金などの額に応じて課税される均等割と、所得に応じて課税される法人税割がありますが、減資により、法人税割についての超過税率の適用がなくなります。

他にも、少額減価償却資産の特例(年間300万円まで、30万円未満の減価償却資産であれば全額費用処理できる制度)が利用可能です。

減資のデメリット

減資を行う会社のほとんどは、財務状況が良くありません。資本金の減少は、会社の責任財産の減少となるため、会社の債権者利益に大きな影響を及ぼし、対外的に信用力の低下をもたらします。

また、資本金の額を減少するには、資本減少の内容、計算書類に関する事項、債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ、知っている債権者に対し個別に通知するなどの債権者保護手続きを行わなければなりません。株主や債権者が多い場合、株主総会の開催も必要なため、事務作業が増大し、社員の業務負担が増えます。

減資は多くの減税効果をもたらしますが、株主・債権者・取引先・金融機関といった第三者への影響も大きいため、総合的な判断と、税務の影響についての効果の試算が必要でしょう。

今回の吉本興業の減資は名義上の減資で、資本金額を減少させ、資本金を純資産の部の他の科目へ振り替えるという処理なので、それだけでは実質的な「財務体質の改善」にはなりません。

同社の財務悪化については、取引先への支払い猶予要請やタレントへの出演料などの支払い遅延が一部で報道され、また2015年3月期の純損益は子会社株の評価損計上などで32億円の赤字となっており、不安感がぬぐえません。今回の減資で、今後も安定した笑いを観客に届けられることを期待したいと思います。

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