法務省の登記統計によれば、平成26(2014)年度の合同会社の設立数は、5年前の5,771件の約3倍となる19,808社となりました。同年度の株式会社設立数が約86,000社となるなかで、実に5社に1社ほどの割合で合同会社が設立されていることになります。
合同会社は、平成18(2006)年5月1日施行の会社法により新しく設けられた会社形態で、小規模事業者だけでなく、アップルジャパン、ユニバーサルミュージックや西友など、大手外資系企業なども合同会社の形態を採用しています。今回は、合同会社設立数増加の背景と、設立時の注意点について見てみたいと思います。
合同会社設立数増加の背景
合同会社の設立は、株式会社の設立と比べ手続きが簡単で、出資者自ら業務を行うため、早い意思決定が可能となり、ベンチャー企業などに向いているといわれています。ただ最近の増加で注目すべき点は、アベノミクスの経済政策で個人の所得税率は引き上げ傾向にあるものの、法人税率が引き下げ傾向のため、多くの高所得の個人事業者が、節税対策のために合同会社化していることです。
わずかな初期費用と代表社員一人でも設立が可能な点、利益配分は出資額に関係なく自由に設定が可能な点、個人事業主よりも経費の範囲が広がることで所得の圧縮が可能な点、そして設立後も決算公告の義務がない点などを踏まえると、合同会社は個人事業者からの転換にうってつけの事業形態なのです。
合同会社設立時の注意点とは
上記のメリットを考えると、個人事業者にとって合同会社設立は有利に感じますが、注意しなければならないのは相続のことです。株式会社であれば、死亡した人が株式を所有していれば、その株式は相続人に渡りますが、合同会社はそもそも「株」という概念がないため、相続手続きが厄介になる場合があります。
合同会社では、出資者=社員、株式会社でたとえると株主であり取締役でもあります。その社員が死亡した際、定款に定めてあれば、社員の死亡による退社を原因とした持分の払戻請求権を承継することになりますが、定款に社員死亡時の規定が何もない場合、事業継承に支障をきたす場合があります。
例を挙げると、一人合同会社の代表社員の夫とその妻が店舗を経営しているとします。定款上には、社員死亡時の規定はありません。代表社員である夫が死亡した場合、合同会社は解散し、清算手続きに入るため、妻は合同会社の名を使用して店舗経営を継続することはできません。また、店舗経営を継続したい場合、合同会社の清算人が会社の資産を譲り受けた後ではじめて営業が再開可能となるため、夫が死亡した後すぐの再開は法律上困難となります。
このように、個人事業者の合同会社化は、節税をはじめとする様々なメリットはあるものの、定款に社員死亡時の規定がないと、事業の継続や相続に支障をきたす場合があります。安易に法人化するのではなく、もしものことがあった時の対策も定款に盛り込むことが必要となります。
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