これまで空き家対策は、各自治体が任意で定めた条例などで対処していました。しかし平成27(2015)年度税制改正により、5月26日に空き家対策特別措置法が施行され、放置しておくと危険な空き家の撤去や修繕を自治体が命令できるようになりました。
誰も住まないことで老朽化し、景観上の問題や倒壊・火災といった危険が生じやすくなります。さらに犯罪の温床にもなりかねません。税制上でも、空き「家」が土地の上にあるだけで、固定資産税が減額されましたが、今回、空き家対策特別措置法の施行により、国が本格的に対策に乗り出すことになりました。
日本の深刻な空き家事情
平成25(2013)年に総務省が発表した「住宅・土地統計調査」によれば、平成25年 10月1日現在の総住宅数は6,063万戸で、5年前と比較すると304万戸の増加とになり、5.3%の増加率になります。一方、空き家はこのうち820万戸で、5年前に比べると63万戸の増加となり、8.3%の増加率になります。平成10(1998)年に初めて1割を超えて以来、空き家率は年々増加し、平成25年には13.5%と、5年前に比べ 0.4 ポイントも上昇。空き家数、空き家率共に過去最高となりました。増加した空き家63万戸のうち、一戸建が49.6万戸で 79.0%を占めています。
空き家対策特別措置法
空き家対策特別措置法の施行により、自治体が固定資産税の納税者情報を活用できるようになったので、空き家の所有者を探すことが以前より容易になりました。
空き家への固定資産税についても、
空き地(更地)……………………固定資産税が課税標準の1.4%、都市計画税が課税標準の0.3%
200㎡までの小規模住宅用地……固定資産税が課税標準の6分の1、都市計画税が課税標準の3分の1
200㎡以上の一般住宅用地………固定資産税が課税標準の3分の1、都市計画税が課税標準の3分の2
となります。
しかし、平成27(2015)年5月26日に総務省が全国の自治体に通知した、「空家法の施行に伴う改正地方税法の施行について」によれば、「空家法に基づく勧告の対象となる『特定空家等』とは、『そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。』(空家 法第2条第2項)ものであり、勧告がされた特定空家等の敷地の用に供されている土地について住宅用地特例の適用対象から除外されるものであること。」とあります。
この通知により、所有者の特定を急ぎ、特定空き家を解体し、土地を更地化し売却をすすめるなど、今年度中の自主的な改善努力を促しています。
しかし、空き家の解体・修繕費用は予定外の費用であることが多く、所有者がすぐに見つかっても、解体・修繕費用が捻出できない場合があります。そこで、まだ一部ですが、解体費を補助する自治体もあります。東京都足立区では、解体費用の9割まで(上限100万円)を補助する制度を設けています。他にも、群馬県前橋市、福井県福井市、鹿児島県鹿屋(かのや)市など、解体費や修繕費の一部補助を始めています。
今後、人口減少により世帯数が減少し、老朽化した家屋の解体数を上回る新築住宅の供給が続けば、新築志向の強い日本では空き家数が増え、空き家対策特別措置法だけでは追いつかない可能性も十分にあります。中古住宅のさらなる流通の整備や普及、空き家の2次利用、また空き家を老朽化させないサービスの提供などが今後の課題となるでしょう。
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