コーポレートガバナンスなど、企業には不正を防止する仕組みがあるにもかかわらず、残念ながら、不正は後を絶ちません。最近世間を騒がせた東芝の不適切な会計処理については、本来、第三者の立場から企業経営をチェックする機能を持つはずの社外取締役が、全く機能していませんでした。
また、外部の会計監査人は、財務諸表に重大な影響を及ぼす不正の発見義務はありますが、全ての不正を見つける義務はありません。
このような状況の中、「公認不正検査士(Certified Fraud Examiner、略称CPE)」という資格に注目が集まっています。
公認不正検査士の始まり
米国ではかつて、不正会計の調査は、調査経験が豊富でない公認会計士と、会計知識に乏しい捜査官のコンビで行われていました。両者の強みを兼ね備えた資格の需要が高まったことが、公認不正検査士資格のそもそもの始まりでした。
公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiners、 略称ACFE)は、米国で1988年に発足し、現在その会員数は7万人を超え、世界150カ国以上に分布しています。日本でも、2005年に日本公認不正検査士協会が発足、当時はわずかメンバー17人でのスタートでしたが、2008年に社団法人化され、会員数も2015年4月時点で1,400人(法人会員含む)を超えています。
過去に米国でCFEが活躍した不正会計事件として、シンシア・クーパー氏が解明したといわれる「ワールドコム事件」(2002年)や、ハリー・マルコポロス氏が以前から詐欺の可能性を米国証券取引委員会に警告していた「米ナスダック元会長バーナード・マドフのポンジ・スキーム事件」(2009年)などがあります。
公認不正検査士になるには?
公認不正検査士試験は、毎年春期と秋期の2回実施されます。公認不正検査士の受験資格要件として、日本公認不正検査士協会への入会と、所定の資格点数40点以上が必要となります。資格点数は、例えば4年制大学卒業であれば、1年につき10点の加点なので、40点獲得できます。
試験は「財務取引と不正スキーム」、「不正の法的要素」、「不正調査」、「犯罪学と倫理」の4科目あり、初回は全科目の受験が必要ですが、科目合格すれば、合格科目は連続3回まで引継ぎ可能なため、未合格科目のみの受験が可能です。
そして、すべての科目に合格した後は、資格認定があります。資格認定には、日本公認不正検査士協会の個人会員であること、2年以上の不正対策関連業務経験を含む50点以上の資格点数があることが必要となってきます。不正対策関連業務経験には、会計・監査、犯罪学、不正調査、損失防止、法律の分野があり、1つにつき1年で5点となります。業務経験充足の判定は、最終的には職務経歴書を通じて下されるため、上記の項目を専門的に行っていなくても認められる場合があります。
米国では、会計の中でも「Forensic Accounting(フォレンジック会計)」(訴訟会計)という分野があり、具体的な業務の例として、不正に関連する診断、訴訟時のサポート、不正が疑われる会計監査での詳細調査などがあります。
フォレンジック会計をキャリアパスに組み込み、公認会計士と公認不正検査士の資格を同時に目指す学生もいます。日本ではまだ馴染みが薄いですが、他の会計プロフェッショナルとの差別化を図るためにも、公認不正検査士の資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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