国税庁は、平成26(2014)年度の税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の件数が59件に達し、過去最高を更新したと発表しました。
平成26(2014)年度末現在の税理士登録者数は75,146人ですが、その数は年々増加傾向にあります。懲戒件数の増加は、登録税理士数が増加していることを言い訳にしていいものではありません。いったいどのような事例で懲戒となっているのか、また懲戒処分の増加にはどのような背景があるのか、考えてみたいと思います。
税理士の懲戒 よくある事例
よくある懲戒事例として、脱税相談があります。クライアントに所得金額圧縮の相談を持ちかけられ、架空の経費を計上するなどして所得を圧縮した申告書を作成してしまうケースです。
他には、税理士資格を有しない者に申告書を作成させ、それらの申告書に税理士が署名押印する「名義貸し」もよくある懲戒事例のひとつでしょう。
懲戒処分を受けた税理士は、税理士とクライアントの間には顧問契約を結んでいませんでした。そして最終的に自分が申告書を確認し、最終責任を持てれば「名義貸し」にならないと誤認識していたのです。
このような場合、2年以内の税理士業務の停止または税理士業務の禁止の処分の対象となります。その際、税理士登録が抹消され、最長で3年間は登録申請することができません。よって、最長3年間は一切の税理士業務ができないということになります。
税理士が懲戒されてしまう背景
前述の脱税相談の例は、「ありえない」と思うのが普通ですが、それでも脱税の幇助に手を染めてしまうのは、まず、顧客獲得競争の激化という背景があります。「あの税理士さんに相談すれば税金を安くできる」という期待へのプレッシャーから脱税指南をする税理士や、クライアントに泣きつかれて「仕方なく」脱税に関与してしまった、という場合もあるそうです。
税理士法第45条第1項に「財務大臣は、税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は第三十六条の規定に違反する行為をしたときは、二年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができる。」とあります。ここでの「故意」は、税理士が積極的・消極的を問わず脱税に関与すれば処罰の対象となるということを意味するので、税理士がたとえ「仕方なく」脱税に関与した場合でも「故意」があると認められ、懲戒処分となります。
日本税理士会連合会の「税理士の倫理」では、「税理士は脱税相談に応ずることができません。また、依頼者が租税に関して不正な行為がある場合には、是正をするよう助言しなければならないことになっています。」と明白にうたっています。脱税相談の拒否による顧客離れは、税理士にとって一時的な損失ではありますが、不正行為に手を染めた際の損失は、税理士業務を行えないことだけでなく、社会的な信用にも及びます。これを機に是非、税理士の倫理について振り返ってほしいと思います。
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(文/江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史、記事提供/株式会社エスタイル)