2015年の会計業界では、資格よりも実務経験を重視した転職市場となり、今まで以上に内定~入社に至る方が多い一年になりました。また、東京のみならず大阪や名古屋、福岡や横浜などの地方都市においても、会計事務所での実務経験者を歓迎する傾向があり、今や会計業界の転職市場は求職者側に有利な状態と言えるでしょう。
さて、一体2016年はどのような転職トレンドになるのでしょうか。今回の会計トピックスでは、2016年の会計業界における転職市場の動向を予測してみたいと思います。
BIG4税理士法人の転職動向
2016年、BIG4税理士法人は、昨年に引き続き積極的な人材獲得戦略を打ち出しています。
特にBIG4税理士法人が抱える主要クライアント(上場企業、金融機関、外資系企業)の業績が良かったこと、また経済市場が活発化しているために新規事業投資の推進やグループ体制の見直しを行う会社が多かったことなど、BIG4税理士法人にとって新規案件受注の追い風となる要素が多かったようです。従って、BIG4税理士法人としても新規人材獲得には注力をしており、若手層であれば税理士試験2科目合格以上の方は採用対象としています。また、以前であれば必須項目であった英語力(TOEIC700点以上が目安)に関しても緩和傾向であり、これからBIG4税理士法人に転職を希望される方にとってはチャンスの1年となりそうです。
中堅税理士法人の転職動向
2016年、中堅税理士法人の採用意欲は非常に高い状態です。特に従業員100名以上の税理士法人では、一般的な税務顧問業務に加えて、資産税関連業務、国際税務関連業務など新規ビジネスを強化中です。また、都心部のみならず地方展開をする税理士法人も増えてきており、人材の強化が喫緊の課題という事務所も少なくありません。
因みに、主要な中堅税理士法人の採用基準は、税理士試験2科目以上、会計業界での実務経験(数年)というパターンが多く、上記基準を満たしていれば前向きに採用頂ける可能性が高くなっています。また、既に税理士(または公認会計士)の資格と税務会計の実務経験をお持ちの方はマネジャー候補として中堅社員待遇で採用をされる可能性が高いでしょう。
資産税専門事務所の転職動向
資産税を専門領域とした会計事務所は、2015年の相続税改正以降、順調に業績を伸ばしています。特に相続税申告業務に強みを持つ会計事務所の場合、保険会社や信託銀行、不動産関連会社などから多くの相続申告案件を受託しています。そのような相続税申告に強い会計事務所では、現在スタッフ層の採用を強化中です。
また、事業承継支援を主要なサービスとするコンサルティング型会計事務所に関しても、新規案件の獲得が順調であり、積極的な人材採用を行っています。因みに、前者のような相続税申告業務をメインとした会計事務所では、徐々に税理士資格(科目数)のハードルが下がっており、場合によっては資産税関連の実務経験があれば、無資格者でも採用を行うようなトレンドに移っていくのではないかと思われます。一方、事業承継コンサルティングを得意とするような会計事務所では、クライアントのオーナーや経営層と近い距離で、事業や経営に関するコミュニケーションを深く取る必要があり、肩書としても税理士や公認会計士の資格を有している方が未だ優先して採用されている傾向があります。
個人会計事務所の転職動向
個人会計事務所は、昨年に引き続き“三極化”の動きを取るのではないかと思われます。三極化とは、「成長する事務所」「廃業する事務所」そして「他の事務所と合併する事務所」のことです。特に最後の1つは今後多くなるでしょう。現在、税理士中でも60歳以上の方が圧倒的に多くなってきており、会計事務所自体も事業の存続について真剣に考えなければならない時期に来ています。既に承継が済み成長路線を取っている事務所は将来性に問題はないと思いますが、事業承継が上手く進んでいない高齢事務所に関しては、廃業を避けるためにも他事務所に吸収してもらうケースが増えています。
上記のようなトレンドから転職市場を見た際に、個人会計事務所では将来の事務所承継者やパートナー候補として、今まで以上にベテラン会計人のニーズが高まるのではないかと思われます。また、総じて個人会計事務所は、大手税理士法人や中堅税理士法人と比べ採用力に欠けるケースが多く、資格の有無よりも経験値や人柄を重視した採用活動が今後も主流になると思われます。
2016年、会計事務所の転職は「情報収集力」で差が出る!
上記のように様々な会計事務所が積極的に採用活動を行っていますので、会計業界で実務経験をお持ちの方は“資格の有無に関わらず”歓迎されるのではないでしょうか。
また、業界経験のないポテンシャル層もこのような転職市場では強気の転職活動がしやすいのではないかと思います。但し、会計事務所の規模や事業内容によって求める人材像が異なるという点は注意しなければなりません。自分自身の能力と転職先で求められる能力、希望する業務と任される業務など、重要な点においてミスマッチが生じると長く勤務することが難しくなってしまうからです。
今や会計事務所も多種多様、事業規模やマーケティング戦略、得意なサービスなど多様化している状態です。このような状況だからこそ、最新の会計業界の現実をしっかりと把握・理解し、ご自身のキャリアプランと合っている事務所選びをして頂ければ幸いです。
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(文/シニアコンサルタント)