1月11日、三菱重工業の長崎造船所香焼工場で、建造中の大型客船に火事が発生しました。7階の劇場付近で約15平方メートルが焼けましたが、長崎県警によれば、ケガ人はいませんでした。また、長崎市消防局によると、出火元は電気配線とみられるそうです。
この船は、同社がドイツのクルーズ会社「アイーダ・クルーズ」社向けに建造中だった大型客船で、2011年に受注しましたが、工期が遅れていました。
財務会計上、決算日の後に起こった今回の火災は、企業の財政状態、経営成績、そしてキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす事象(後発事象)ですが、具体的にはどのようなことが考えられるのでしょうか。
後発事象の種類と処理
後発事象の種類について見てみると、「修正後発事象」と「開示後発事象」があります。
「修正後発事象」は、事象が決算日後に発生し、その実質的な原因が決算日時点において既に存在している会計事象をいいます。その中でも重要なものについては、当期財務諸表を修正する必要があります。
「開示後発事象」は、実質的な原因が決算日時点で存在せず、当期の財務諸表に影響はありませんが、次期以降の会社の財務諸表に影響を及ぼす会計事象をいいます。この場合、当期の財務諸表には注記による開示が必要になります。
いずれの後発事象も、共通点はその名の通り、決算後に発生した事象であり、かつ会社の財務諸表に影響を及ぼすという点です。どちらの後発事象に該当するかを判断するにあたり、まず決算日の後に発生した事象の背景や原因に注目し、そしてその実質的な原因が決算日において存在しているか否かがポイントとなります。
三菱重工業の財務諸表上の影響は
それでは、三菱重工業の今回の火災は、財務諸表上、どのような処理が適切と考えられるのでしょうか。
建造中の大型客船「アイーダ・プリマ」は、総トン数124,500トン、全長300メートル、全幅37.6メートルで、焼失したのはわずか約15平方メートルであったことから、船体に対して小規模の火災だったようです。同客船は、初期設計と仕様確定の遅れ、そして度重なる設計変更などにより、工期が当初予定の2015年3月から大幅に遅れていました。
今回の出火原因の究明によりさらなる遅れが考えられるため、その結果、費用の増加を招くことは避けられないでしょう。
一般的に、火災による損害の発生は、開示後発事象といわれます。ただ三菱重工業の場合、昨年10月30日に発表した2015年第2四半期決算で、別の客船の引渡し遅延による損失として、客船事業で309億円の特別損失を計上しています。
今回の火災による遅延コスト増の金額によっては、影響額を2015年の第3四半期の決算に織り込む必要があるかもしれません。
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