ここ数年、会計不祥事のニュースが続いています。株式の新規公開をしてすぐに経営者による不正があったり、日本を代表するグローバル企業で不正会計が起こったりと、企業や監査法人を巡る環境が激変していることは皆さんも感じていらっしゃるのではないでしょうか。
特に、監査法人に対する社会の目は厳しくなっています。今回は近年の監査法人、会計監査業界を巡る環境についてお伝えしたいと思います。
日本取引所から監査法人への要請
近年、新規公開企業が公開直後に業績の下方修正をした事例や、創業経営者による不正が生じた事例が起こりました。
新規公開企業数が伸び、IPOを巡る環境が良好な中、新規公開直後の企業で不正会計や業績予想の修正が発生しています。これを受け、日本取引所グループは2015年3月31日に「 最近の新規公開を巡る問題と対応について」を公表し、新規公開の品質を向上する宣言を行いました。※1
さらに日本証券業協会と日本公認会計士協会へ対して「新規公開の品質向上に向けた対応のお願い」が提出されました。
こちらでは、新規公開会社の経営者による不適切な取引への対応や上場直後の業績予想の大幅な修正への対応等について、取引所と監査法人、公認会計士が情報交換に努めること、監査法人、公認会計士へ適切な監査の実施や不正リスクへの適切な対応を求めること、監査実務の点検や実効性の確保への取り組みをすることを求められております。
公認会計士に厳格監査の要請!?
しかし、2015年は新規公開企業だけではなく、日本を代表するようなグローバル企業でも巨額の不正会計が起こりました。監査法人、会計監査業界を巡る社会環境などはさらに厳しいものとなりました。監査では不正を発見することが直接の目的ではないのですが、不正会計が生じるたびに監査法人の責任が問われるような時代となったのです。
そのような社会情勢の中、日本公認会計士協会は2015年12月22日に会長声明として「公認会計士監査の信頼回復に向けて」を公表しました。※2
そして、年が明けて間もない2016年1月13日の日本経済新聞には、こんな見出しの記事が掲載されました。「公認会計士協会、会員に厳格監査を要請 経営者不正リスク念頭に」
この「厳格監査」という言葉ですが、監査を実施するにあたり、拠り所となる監査基準には存在しません。こちらは、おそらく5~6年前に放映されたテレビドラマの中で用いられた言葉が定着し、報道においても使用されたものと思われます。
実際の会長通牒は2016年1月27日に会員向けに「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」として公表されました。※3
内容としては、より一層職業的専門家としての懐疑心を保持・発揮して監査業務に取り組むことが要請されております。
上記の文面においては、「監査人は強い態度で監査業務に臨むことが必要である」「会計不祥事が繰り返されることのないよう、職業的懐疑心をもって監査を実施しているかを厳しく自問していただきたい」と厳しい言葉が盛り込まれており、まさに公認会計士監査の信頼回復に向けた会長による通牒となっています。
このように公認会計士の監査を巡る環境は厳しさを増しています。しかし、それは公認会計士という仕事が社会から高い期待を背負っていることの表れといえるでしょう。
参照
※1 日本取引所グループ「最近の新規公開を巡る問題と対応について」
http://www.jpx.co.jp/news/1020/150331-02.html
※2 日本公認会計士協会「会長声明「公認会計士監査の信頼回復に向けて」」
http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/jicpa_pr/news/post_2017.html
※3 日本公認会計士協会「会長通牒「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」」
http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/jicpa_pr/news/post_20160123.html
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(文/江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史、記事提供/株式会社エスタイル)