世界各地の有力者が秘密のペーパーカンパニーを作ったり、財産隠しをしたりする際に支援していたといわれる、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した大量の内部文書、いわゆる「パナマ文書」の内容が、世界的に大きな衝撃を与えています。
このパナマ文書で問題となっているのは、タックスヘイブンを利用した資産隠しや金融取引です。
今回の出来事に大きく関わっているタックスヘイブンとは、果たしてどのようなものなのでしょうか?
タックスヘイブンとは何か
タックスヘイブンは日本語で「租税回避地」と呼ばれており、税金をゼロか極端に低い税率に設定している国や地域を指しています。
タックスヘイブンを政策に取り入れている国は、比較的産業の少ない小国が多く、税収と引きかえに海外からの企業誘致や富豪を呼び込むことで、副産物的に収益を得ることが目的です。
実例として、F1グランプリの開催地として有名なモナコ公国に、投資で成功した多くの大富豪が移住したり、AmazonやAppleをはじめ世界的に最大手の製鉄会社であるアルセロールミタルも税率の低さを理由に本社機能をルクセンブルクに移したりするなど、数多くの国がタックスヘイブンを導入することによって効果をあげてきました。
アジア地域では、日本においても税率が低い香港やシンガポールに拠点を移す企業が多く、村上ファンドがシンガポールに新会社を設立して話題になりました。
しかし、こうしたタックスヘイブンを利用することによって、意図的な租税回避が行われることも懸念されています。そのため日本では、タックスヘイブン対策税制が設けられています。
法人所得税が存在しない、もしくは税率が20%以下の国や地域が対象。事業基準や実態基準といった条件を満たしていない企業の子会社に対しては、法人所得に日本の法人税と地方税が課税されることになっています。
そのため税率の低い国に子会社を設立する計画がある企業は、タックスヘイブン対策税制の適用条件を把握しておく必要があるでしょう。
パナマ文書の問題点は?
今回明らかになったパナマ文書には、ロシア、アイスランド、中国、アルゼンチンをはじめ、世界各国の名だたる大物の名前があがりました。
こうした行為は直接的な違法行為にはあたらないものの、本来は国に納められるはずだった莫大な税金が誤魔化されている可能性があるので、世界中に大きな波紋が広がっています。
文書に記載されていた有力者の多くは事実関係を否定しているものの、名前のあがっていたある国の首相は数千人の抗議を受けて辞任を表明するなど、すでに大きな影響が出ています。
日本人でも、某セキュリティ企業の創業者の名前があがっていますが、同社は否定しています。
こういった問題が表面化する以前から、タックスヘイブンを介した取引は金銭の流れが見えにくいことから、税金調査の難しさやマネー・ロンダリングに利用されているといった指摘がされてきました。
日本の企業で税務を行う人にとっても、企業の国際化が進む昨今では、タックスヘイブンは必ずしも無関係な事柄とは言いきれません。
単なる時事ネタとは思わず、この出来事をきっかけに世界的な税制事情についても理解を深めていただきたいです。
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