2016年4月23日付の朝日新聞の報道によれば、大阪府にある私立中学・高等学校の裏金問題に絡み、運営元の学校法人が大阪国税局の税務調査を受け、2015年3月期までの7年間で約1億円の申告漏れを指摘されたことがわかりました。
地方税も含めた追徴税額は約5,000万円とみられ、法人は修正申告を既に済ませたとのことです。
同校は「模擬試験受験料」や「副教材費」などの名目で、必要以上の金を生徒側から徴収し、その余剰金を隠し口座にプールしていたことが発覚。大阪府から私学補助金を大幅に減額されていた経緯があります。
最近、税務調査による申告漏れだけでなく、学校法人による不適切会計が明るみになっています。今回は、学校法人の不適切会計の事例をご紹介します。
広島の学校法人の事例
広島県のある学校法人は2014年、寄付金を取り扱う関連団体で、多額の使途不明金があったことを発表しました。
同法人によれば使途不明金の額は約2億2,000万円、元法人理事長補佐で維持会の事務担当者が長年にわたり、不適切な会計処理を行っていました。
事務担当者によれば、維持会運営のために必要な経費、法人の事務に関する事務担当者の活動費・行動費、トラブル解決費等に使用したとしています。
学院側の調査の結果、領収書・帳簿等会計書類がほとんど残っておらず、事実確認が取れませんでした。事務担当者は、1992年の維持会発足時から事務を担当し、一人で業務を行っていました。公印押印の際も管理規程に沿った手続きを経ずに、事務担当者の指示により自身または総務課長が押印していたり、重要な案件に対する協議・検討が不十分であったりするなど、コンプライアンス上や管理運営体制全体に問題があったことも不適切会計の原因とされています。
今後の再発防止策として、学院は内部監査室等による実地調査や、コンプライアンス通報制度等の仕組みづくりなどを挙げています。
東京の大学の事例
2014年4月、東京都内や群馬県、愛知県にキャンパスを置く大学を運営する学校法人の元総務課長が、大学の運営費など計約1億1,200万円を着服し、2013年5月に懲戒解雇されました。
元総務課長は2012年4月、大学の定期預金1億円を無断で解約して普通預金口座に入金し、45回にわたり全額を引き出していました。これ以外にも、不動産関連の資金約1,200万円も着服していたようです。
それまで、印鑑や通帳の管理を一人の担当者に任せていた点、事務体制の未熟さやチェック機能の不備といった学園全体のガバナンスに問題があった点などを鑑みて、今後の防止策として学園内の規程の整備や、それらが機能しているかを確認するための監事監査、内部監査を随時実施しています。
デロイト トーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社のレポートによれば、学校法人の粉飾決算については、ガバナンスチェックが不適切会計の兆候発見のポイントであるとしています。学校法人の特性の理解、ガバナンス体制の分析、また理事長等の上席者との十分なコミュニケーションが重要だと説いています。
学校法人の理事長やその運営に携わる人々は、不適切会計による影響や学校の社会的責任を自覚し、適正な運営に努めるよう、あらためて法人のガバナンスが機能しているか見直すべきではないでしょうか。
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