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【コラム】進む課税逃れの対策強化。「パナマ文書」問題の後に求められる取り組みとは?

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【コラム】進む課税逃れの対策強化。「パナマ文書」問題の後に求められる取り組みとは?

 

2016年6月30日〜7月1日 、京都市でOECD(経済協力開発機構)租税委員会の会合が行われました。この会合は、多くの富裕層や多国籍企業がタックスヘイブン(租税回避地)を利用して課税逃れを行っていた、いわゆる「パナマ文書」に関する問題を受けて、その対策を講じた内容となったようです。

5月10日にパナマ文書の最新データベースが公開され、日本でもさまざまな有名企業や著名人が関わっていたことが分かりました。
この問題に対して行われた取り組みは、今回の会合が初めてではありませんが、タックスヘイブンに関する問題の対策は、現在どこまで進んでいるのでしょうか。

課税逃れ抑止に向けた、現在までの取り組みは?

パナマ文書の問題によって、タックスヘイブンを利用した課税逃れの実態が大きく知られるようになりましたが、この問題はもっと前から深刻な問題として指摘されており、有効な対策が求められてきました。

2013年の6月に北アイルランドで行われたG8サミット(主要国首脳会議)では、リーマン・ショック後、各国の財政が悪化したことで課税逃れをする企業が増えていることが問題視されていました。この議論はイギリスのキャメロン前首相が主導者となる形で進み、「OECDと連携し、多国籍企業が税金を支払っている国を把握するための仕組みづくりを進める」ということで合意しました。
また、2013年7月に公表されたBEPSプロジェクト(税源浸食と利益移転に対処するために立ち上げられたプロジェクト)では、「電子商取引課税」「有害税制への対抗」「租税条約濫用の防止」「移転価格関連の文書化の再検討」など、課税対策に関する15項目の行動計画が発表され、同年9月にロシアで行われたG20サミットで全面的に指示されました。

こうして多くの国が対策を進めている中で、パナマ文書の問題が浮上し、課税逃れの抑止に向けた動きがますます注目されるようになったのです。

広がる活動。しかし不安も

パナマ文書の公表後、2016年6月1〜2日にパリで開かれたOECD閣僚理事会の声明では、「各国が資金洗浄などの不正が疑われる事例の情報を素早く入手できる仕組みづくりを急ぐこと」で参加国の意見が一致しました。

6月6日にはOECD租税委員会議長を務める浅川雅嗣財務官が「国境を利用した多国籍企業や富裕層の租税回避により、税の公平感・信頼感を失わせしめていることはとうてい看過できない」とBEPS(税源浸食と利益移転)取り組みの背景について語り、課題として「金融口座に関する自動情報交換について」「自動情報交換への非協力地域のブラックリスト作りについて」「実質的所有者情報と交換制について」の3つについて述べました。

「ブラックリスト作り」については、京都で行われたOECD租税委員会の会合でも「掲載基準」が議論の一つとなり、その結果、以下の3つの基準が定められました。
2016年7月1日の毎日新聞によると、ブラックリストに載せる非協力的な国・地域を特定する基準として、
●各国の税務当局間で年1回、非居住者の銀行口座情報を自動的に交換する枠組みに参加しているか
●納税情報などの交換を行う条約に署名しているか
●情報交換に関して制度が対応できているか
があり、原則2項目を満たさないとブラックリストへ掲載されてしまいます。
3つの基準の中でも、「情報交換に関して制度への対応ができているか」は重視され、これが満たされていないと、それだけで掲載となるようです。

OECDの試算によると、課税逃れによって失われている税収は、年間で約12〜29兆円にまでのぼるそうです。こうした税逃れによる不公平感を減らすためにも、有効な対策の策定と、それを広範に根付かせるための取り組みが求められています。

タックスヘイブンは法律で禁止されているわけではありませんが、マスコミなどで企業名が取り上げられてしまうと、国民の反感が強まり企業批判につながりがちです。今までの教訓を活かして、節税対策にもっと気を使うことになるでしょう。
また、近年になって明らかになった課税逃れの問題がせめて今後の対策強化に活かされるよう、現在の活動がこのまま進展することを期待したいものです。

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