日本の国際空港は、出国エリアにしか免税店がないことにお気付きでしょうか。
海外出張や旅行に行かれる際、出国手続後に免税店に立ち寄ってお買い物をする方もいらっしゃると思います。しかし、海外に帰国する方は便利ですが、日本人はそこで買い物をしてしまうと買った商品を旅先でも持ち歩かなければならず、不便だという声がありました。
昨年8月27日、国土交通省は「平成29年度税制改正要望」に、国際空港の入国エリアに免税店の設置を可能にする制度の創設を再度要望しました。目的は、ズバリ「利便性の向上と経済の活性化」ですが、実は平成25(2013)年度の税制改正でも一度要望して不採用となった経緯があります。
今回は、改めて免税の範囲と根拠についておさらいし、そして誰にどのような効果があるか、検証してみたいと思います。
「免税」の範囲と根拠
2015年に日本を訪れた外国人観光旅行者数は1,974万人と、前の年に比べ47.2%も増加しています。安倍内閣が掲げる「日本再興戦略2016」や「観光ビジョン実現プログラム2016」など、観光産業の活性化を推進している点や、2020年の東京五輪やパラ五輪の開催を控え、ようやく「観光先進国ニッポン」に向け歩調を合わせ始めたところです。
ここで改めて、免税の範囲について考えたいと思います。
免税品には消費税がかからないことは周知の事実です。たばこの「たばこ税」、お酒の「酒税」、化粧品などの「関税」もかかりません。
免税は「保税地域」がキーとなります。保税地域とは外国から輸入された貨物、外国へ輸出する貨物を、輸出入の許可が下りるまで置いておくことのできる場所を指します。「保税」とは、関税の徴収を一時留保することをいいます。
保税地域には「指定保税地域」「保税蔵置場」「保税工場」「保税展示場」「総合保税地域」の5種類があり、それぞれ外国貨物の積卸し、運搬、蔵置、加工・製造、展示などの行為をすることができますが、関税徴収の確保および取締りのため保税地域にある外国貨物は税関の監督下に置かれます。免税店は5種類の中の保税蔵置場に該当します。
出国審査後は関税法上「外国」と見なされ、関税法上では「日本の国土にあるが日本ではない場所」ということになるので、税金を取られることがなくなります。
入国エリアの免税店は、日本人 or 訪日外国人に有益?
入国エリアの免税店は、上記で述べた利便性の向上だけではありません。渡航先国の免税範囲が少ない場合は、免税店で購入した商品が現地で課税される可能性もあります。しかし入国エリアの免税店は、そのリスクを回避することができる点から日本人に有益といえるでしょう。
反対に、訪日する外国人観光客にとっては、日本到着後の免税店での買い物は荷物が最初から増えてしまうため、デメリットとなりかねません。例えば、宿泊先へ配送するサービスや、帰国時までの預かりサービスなどを行わないと観光客のストレスになってしまうことでしょう。
入国エリアの免税店は、アジアの主要なハブ空港や中東、ヨーロッパなどではすでに導入されており、アジアの空港では入国審査エリアの手前に、ヨーロッパでは受託手荷物をピックアップする場所(バゲッジエリア)に多く設置されているようです。
免税店が「保税地域」内でなければならない以上、既存の日本の国際空港のレイアウトでは、そのまま免税店を持ってくることはかなりの工夫が必要そうですが、新たな免税ショッピングのオプションができることは、一消費者にとってはうれしいニュースだと思います。
【この記事を読んだ方におすすめのサービス】
◆≪会計業界の転職はプロにおまかせ!≫無料転職サポートサービスとは?
◆≪転職で譲れないポイントを相談&発見!≫無料転職相談会・無料転職セミナー