2016年11月14日、新世紀JA研究会(代表=八木岡努・JA水戸組合長)は、東京・大手町のJAビルで「新総合JAビジョン確立のための危機突破・課題別セミナー」を開きました。前回(2016年10月4日)に続く2回目で、前回で課題となった「公認会計士監査の内容や今後の対応」などについて意見交換が行われました。
現在、地域の農協の監査は、JA全国監査機構により行われています。今後はこれまでの農業協同組合監査士(略称:農協監査士)による監査から、公認会計士による監査に移行する作業を進めていきます。
農協監査を公認会計士監査に移行するにあたり、どんな課題があるのでしょうか。
JA全国監査機構とは?
JA全国監査機構は特別法による民間法人で、全国の約700の全ての農協に対して監査を実施しています。前身の「全国農業協同組合中央会」(全中)は、戦後間もない1954年に設立され、監査事業の実施が法律に定められました。略称「農協監査士」の制度もこの時期に開始され、後に都道府県中央会は単位農協、 JA全中は連合会という分担で監査事業が進められていきました。監査体制は次第に整備が進み、年間に全体の30%程度の組合の監査を実施するようになりました。それまでは、「指導監査(業務運営監査)」といわれるコンサルティング色が濃く、監査の補完的な機能を果たしてきました。農協監査士は、指導監査に加え、法律に基づく「財務諸表等証明監査」も行っています。
1996年に農協法に基づく農協中央会の決算監査導入、さらに2002年には JA全国監査機構を設立して、都道府県中央会と全中の監査事業を統合。総合 JAは全 JAを毎年監査する体制を整えるようになります。
そして2015年、安倍政権では農協革命を提言し、全国農業協同組合中央会(JA全中)を 平成31年9月までに一般社団法人に組織変更することが決まりました。
公認会計士監査への移行の課題とは?
前年11月14日に行われたセミナーでは、JA全国監査機構の監査法人化について触れられました。JA全中の太田実常務は、50人程度の公認会計士を持つ監査法人を想定しており、そのための最優先課題として、公認会計士の確保を挙げています。
また、監査費用については、1農業協同組合あたり1,000万~2,400万円をモデルとして算出しています。これは、信用金庫・信用組合の統計をベースに、総合事業を営むJAの特性を加味して算出し、それぞれのJAは新制度移行となる2019年度までに、このJAの監査法人か、一般の監査法人かのいずれかを選択することとなっています。
この他にも、リスクアプローチ監査の徹底が挙げられました。これまでの農協監査士による監査では慣行で監査対象を決め、監査士の経験と勘に頼りがちで必ずしもリスクを反映していない可能性があったとの指摘があり、そのためにはJAでの内部統制システムを確立させる必要があるとの意見によるものです。
JA全中によると、2015年度にモデルJA(100JA)のリスクアプローチ監査を通じて問題点・課題を整理し、2016年度以降、中央会・JAバンクと連携しつつ、期中監査時に改善指導の実施を予定しています。
今後の公認会計士監査への変更に先駆けて、JA横浜では、2008年から専任担当者を配置して内部統制の整備を進めています。金融商品取引法に求められている内部統制報告書も作成しており、JA横浜のように公認会計士監査に対処できる水準まで達している農協もあるようです。
いずれにせよ、新制度へ移行となる2019年はあっという間にやってきます。安倍政権の施策の中でも注目の一つである農協改革。政治的な圧力がかかることなしに、うまく制度移行できることを願いたいと思います。
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