会計業界の業界動向・トピックス

会計業界トピックス

【トップ会計人が語る】自分が目指したい方向を明確に。どんな税理士になりたいのかを大切にして欲しい。

会計業界トピックスの一覧へ戻る



sakurada1201-thumb-100xauto-77

東京・渋谷区 桜田・五十嵐税理士法人
代表社員 税理士
桜田 匡氏

1972年生まれ 早稲田大学卒。東京会計総合事務所勤務後、2001年から2005年までアーサーアンダーセン税務事務所(現KPMG税理士法人)勤務。同社にて多数のM&A、企業再生、連結納税のコンサルティング業務にインチャージ(責任者)として従事。連結納税については同社著「Q&A連結納税導入の手引きと申告書の書き方」の執筆を行う。2005年1月、独立開業。桜田・五十嵐税理士法人を設立し、現在に至る。

会計知識ゼロから税理士試験への挑戦、M&Aへの興味から大手税理士法人での業務にチャレンジ。

1sakurada-thumb-150xauto-71 私が税理士を目指し始めたのは大学を卒業してからでした。大学卒業後、当初は営業として就職していたのですが、営業の仕事をする中で「専門知識が必要だ」と考えて独学で簿記を勉強してみたところ、意外と面白く、一念発起し税理士を目指すことにしました。その後、税理士試験の勉強に専念するため退職しましたが、文学部出身であり1社目で営業をしていた私には、ベースとなる会計の知識が全くなかったため、4年の勉強期間中は毎日12~13時間以上もの時間を勉強に費やしました。勉強期間中、M&Aや国際税務に興味を持ち始めましたが、その時の興味関心が、のちのM&A関連の仕事につながっていき、それが自分の税理士としての基礎になっていきました。

 税理士試験合格後、最初に入所した事務所では中小企業向けの法人税務や個人向けの所得税業務などを行っていました。しかし、もともと会計業界を目指している時の自分の興味がM&Aに関する業務にあったため、「M&Aや組織再編に関わる税務」を経験するため現在のKPMG税理士法人の前身であるアンダーセン税務事務所に転職しました。アンダーセン~KPMG時代は、M&Aや組織再編業務を中心に非常にハードな仕事をこなしていました。当時は2000年代前半で、IPOやM&Aも市場が拡大しており、M&Aに関する案件が多かったですし、自分自身もM&Aの仕事がやりたいと思っていたので、自分から上司に直訴しM&Aの仕事に積極的に携わらせてもらいました。その頃の仕事はハードワークで体力的にもかなり厳しい環境でしたが、兼ねてから興味を持っていた分野でしたので、とてもやりがいのある日々を過ごすことができました。

苦労した独立当初、税理士は「付加価値」を提供することが重要。

2sakurada-thumb-150xauto-72 アンダーセンに入所してしばらくの間は、自分自身がやりたいと思っていたM&Aや組織再編業務を中心に携わらせてもらっていたので、仕事にやりがいを感じていました。しかし、米国でSOX法が施行されたころから、会計事務所や監査法人に対して業務の独立性が求められるようになり、大手税理士法人では分業体制を余儀なくされ、クライアントに対して税務、コンサルティングなど複数のサービスを並行して提供することが難しくなっていきました。私としては、クライアントに対して税務以外の視点からも幅広くアドバイスをしたいと思っておりましたので、それを実現するため独立に踏み切りました。

 独立当初は自宅にオフィスを構えてスタートしましたが、開業後の数ヶ月間は全く仕事がなく、精神的にも非常に厳しい時期を過ごしました。ただ、自分が恵まれていたのは、前職の仕事仲間や知り合いからクライアントをご紹介頂けたことです。そういった周囲のサポートやその後の営業努力もあり、仕事は徐々に軌道に乗り、独立して1年後、現在のパートナーである五十嵐が合流しました。その後、毎年コンスタントにクライアントを増やし、現在は国内上場企業やそのグループ会社、金融機関やSPC、日系未上場企業・ベンチャー企業から外資系企業まで幅広くサポートさせて頂いています。

 当法人の方針としては『クライアントに対して高い付加価値を提供すること』を重視しています。現在の税理士業界は価格競争が激しくなっていますが、当法人は「価格」ではなく「サービス内容」で価値を提供することを意識しており、資本政策や資金調達のアドバイス、組織再編などの高度な税務や、英語での対応や国際業務への対応など付加価値の高いサービスを提供することで他の会計事務所との差別化を図っています。最近は語学力を必要とする案件が増えてきているので、そういった案件を伸ばしていきたいと考えていますが、高度な案件の対応ができるスタッフの採用は難しく、そこが悩みでもあります。個人的には事務作業よりも人とのコミュニケーションのほうが好きなのでそちらに専念したいのですが、もう少し頑張らないといけないですね。

会計・税務だけにならないよう、関連する色々なことに興味を持つことが必要。

3-1sakurada-thumb-150xauto-74 税理士を目指しておられる方には「営業が苦手だから税理士を目指す」と言う人も少なくありませんが、税理士として成長していくためには営業力も身に付けていかなければならないと思います。また、税金に詳しいのは当然ですが、税金にしか詳しくないのではダメだと思います。

 税理士は、経営者と話すことが仕事ですので営業に苦手意識を持っていては税理士の仕事は務まりません。そもそも経営者の方々は税理士に何でも聞いてきますから、質問は税務だけに限りません。なぜなら、税金は企業経営においてひとつの重要な要素ではありますが、税金を理由に経営判断を下すことはあまりないからです。例えば、経営者がM&Aに関する判断を下すときには、「税金」ではなく「経営」の視点から判断しますが、その際に税務ありきでM&Aについてのアドバイスをしていては本当のプロとは言えません。税務以外の知識や視点にも興味を持って情報を吸収していけば、その情報をさらに深掘りでき、新たな興味もわいてくると思います。

 私の場合も資格の勉強期間中にM&Aに興味を持ち、そこからM&Aや組織再編税務の仕事へと広がり、日々の情報収集や勉強を続けることでさらに知識が深まっていきました。テレビや雑誌などから手に入る表面的な情報でも経営者と話を合わせることはできますが、それでは経営者の方々は満足してくれませんし、プロの税理士とは言えません。経営者との話は、その周辺情報をしっかりと勉強していれば会話の中に深みとして表れます。どんな分野でもいいですので、まずは基礎知識をつけ、情報を取捨選択し、自分の考えを持っていくことが大切だと思います。

カイケイ・ファンをご覧の皆様へ一言

 会計業界を目指す方や会計業界で働く若手の方には、まず「やりたいことを明確にして欲しい」と思います。
 会計業界は決して楽な業界ではありません。仕事が忙しく残業が多かったり、職場での人間関係が複雑であったり、大変なことも少なくないため、残念ながらそういったことを理由に勤務先を早期に辞めてしまう人も頻繁に見受けられます。その後の転職の際も、やりたいことを持たずに転職先を決めてしまうと、次の転職先でも長続きしませんし、結果的に転職を繰り返すことになってしまい、税理士として成長していくこともできません。そうならないためにも、まずはやりたいことを明確にして、自分が向かう方向性を定めて欲しいと思います。自分の進みたい方向が決まれば、それに向かっている以上は、安易に辞めてしまったり無目的に転職先を決めたりすることもなくなり、その分野についての興味関心から知識も増え、税理士としての成長につながります。  税理士を目指す皆さんにはやりたいことを明確にし、「~がやりたくないから税理士を目指す」のではなく、「~な税理士になりたい」という姿勢でやりたいことを大切にしながら頑張って欲しいと思います。
(2011年12月1日掲載)

桜田・五十嵐税理士法人

トップ会計人が語る記事一覧へ戻る

会計業界トピックス一覧へ戻る


年収査定

ページの先頭へ

業界動向
転職・求人情報
個別転職相談会・セミナー
カイケイ・ファンについて

プライバシーマーク