「二世帯住宅問題がやっと解決した!」
先日、ハウスメーカーに勤める知人のAさんがこんなメールを私に送ってきました。彼の文面はどうして興奮気味なのでしょうか?実は「税」が理由なのです。
皆さんも税金に関するニュースを新聞で見かけると思います。おそらく所得税や消費税の値上げの動きは直接かかわってくるので関心が高いはず。こうした税制改正の内容を精査することは会計人にとって毎年行う「マスト」の行為ですが、保険業など、税金と関係の深い業種の社員もその内容を細かくチェックし、一喜一憂しています。
Aさんが喜んでいるのは相続税の「小規模宅地等の特例」の拡充。この特例は、亡くなった方(被相続人)と同居していた人が、その家を相続した場合に、敷地の評価額を最大80%減額できるもの。相続税の納税により自宅等を売却しなくてはならなくなることを防ぐ制度といえます。
今回の改正では、評価額が減額される敷地の限度面積が240㎡から330㎡になるなど、特例の適用範囲を広げる拡充がいくつか行われていますが、Aさんが注目した「二世帯住宅問題」は、特例適用の高いハードルとなっていた「同居」の要件に関係することです。
従来、二世帯住宅は、その住宅の内部で世帯同士が互いに行き来できる構造になっていなければ同居とみなされませんでした。例えば1階は親、2階が子というように、出入り口が別々で、顔を合わせなくても生活できる住居については、親が亡くなってその敷地を2階に住んでいた子が相続しても適用対象外。この運用については会計人のあいだでも「杓子定規に過ぎるのではないか」と批判がありました。
改正では、2014年以後の相続からは二世帯ごとに独立した住居であっても同特例が適用できることが明確化されています。従来税制の適用関係に配慮しながら二世帯住宅の設計を行っていたハウスメーカーの自由度も増すことになります。
カイケイ・ファンの記事「孫への教育贈与で税理士はどうなる?」でも言及していますが、資産税制の潮流を見る際は、増税の方向性の他に、生前の若い世代への所得移転を促す方向性についても把握しておく必要があります。今回の小規模宅地特例の拡充も、その流れの中にあるといえます。
二世帯住宅の税メリットを最も享受できると考えられるのは、親の資金で建てた二世帯住宅に住む子です。つまり、親の生前に、子へ「住まいの提供」という実質的な所得移転をすることで、相続税が軽減されるという見方をすることができるのです。
親子で「ひとつ屋根の下」に住む二世帯住宅については、東日本大震災後に家族の「絆」の大切さが見直され、注目が高まったという話も聞きます。今回の改正により、さらにトレンドが後押しされそうな機運となっています。