最近、ユニクロに対するバッシングが盛り上がっているのをご存じだろうか?
大手のマスメディアでは、スポンサーでもあるユニクロへの遠慮からかほとんど報じられてこなかったが、今年3月に週刊東洋経済が「3年以内5割の新卒社員が辞める高い離職率」、「慢性化するサービス残業」「深刻化するうつ病罹患」といった実態をリポートしてから、風向きが一変。ネット論壇にも飛び火し、大変な「炎上」を見せた。
そんな中、ユニクロが新たに「世界同一賃金」を打ち出し、さらに波紋を広げている。
社内英語の導入などグローバル化を進めている流れで、今度は全世界で採用した店長候補の社員らの賃金体系を統一するというのだ。この構想は、柳井正会長兼社長が朝日新聞の単独インタビューに応じた中で飛び出した。「新興国や途上国にも優秀な社員がいるのに、同じ会社にいても、国が違うから賃金が低いというのは、グローバルに事業を展開しようとする企業ではあり得ない」と、世界同一賃金の狙いを語り、影響を受ける日本などの先進国側の賃金について「低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」とも踏み込んだ。
案の定、ネット論壇がこのことで再び烈火のごとく燃え広がったのは言うまでもない。
柳井氏は、一連のブラック企業批判に怯むどころか、新たなガソリンをぶちまいた。しかし「100万円は仕方が無い」発言は、全く失当なのだろうか?労働問題を熱心に報じているリベラル系の朝日新聞の取材に積極的に応じ、「世界同一賃金」を敢えて特報させたあたり、ある種のメディア戦略を感じさせる。
柳井氏の経営者としての思惑は何なのだろうか? 注目はこのくだりだ。
「僕が心配しているのは、途上国から海外に出稼ぎにでている人がいる、それも下働きの仕事で。グローバル競争のもとで、他国の人ができない付加価値を作り出せなかったら、日本人もそうやって働くしかなくなる。グローバル経済というのは『Grow or Die(グロウ・オア・ダイ)』(成長か、さもなければ死か)。非常にエキサイティングな時代だ。変わらなければ死ぬ、と社員にもいっている」
ブラック企業批判をグローバル化の問題に置き換えている印象があるとはいえ、柳井氏なりに透徹した目で長期展望を描いていることが分かる。遅かれ早かれ、グローバル化で日本も他の先進国と同様、新興国に仕事を奪われる時代が迫っている。これは会計士や税理士も例外ではない。アメリカでは企業が、同じ英語圏のインドに税会計の仕事を安くアウトソーシングするようになり、国内の会計事務所の仕事が減少。職を失うスタッフが増えている。日本も、TPP加盟などでグローバル化が本格化すると不安は残る。
ただし、日本の場合、言語や法制、税制の違いなどから会計事務所や税理士事務所の仕事が中国に流れることは当面考えにくい。このコラムの読者の多くは志望者あるいは若手の会計士・税理士なのでキャリアアップを続けて、将来に備えることができるはずだ。何よりも、あなたがもし40歳になった時点で、何の資格も持たない状態だったら天地の差だ。会計士や税理士の資格を取得し、それなりの実務経験を積んでいれば、万一、新興国との激烈な価格競争にさらされる超グローバル化が進んだとしても、「年収100万円で働く」という状況には絶対なるまい。資格取得で世界同一賃金の時代をサバイバルしよう!