2013年7月9日掲載
「消費税法か酒税法か」。二択の謎
8月6日から、平成25年度の税理士試験がスタートします。受験を予定されている方は、今はまさに追い込みの時期といったところでしょう。
さて、税理士試験の際、誰しも悩むのが科目の選択。私は前々から、税理士試験の選択科目について疑問に思っていたことがありました。それは、なぜ消費税法と酒税法は両方選ぶことができず「消費税法又は酒税法」となっているのかということです。
もちろん、いわゆる間接税を一括りにするという理屈はわかりますが、消費税と酒税が同等の位置にあることに違和感もあります。実務において、消費税に関わらない税理士はほぼいませんが、酒税はそうそうお目にかかることはなく、「実用性」にあまりにも開きがあるからです。
酒税法を受ける少数の人とは?
受験者数にも大きな差が出ています。平成24年度のデータでは、消費税法の受験者10730人に対して、酒税法は962人と約11分の1。受験者も、合格後に「使える」税法でなくてはモチベーションが上がらないという考えがあるのかもしれません。
私はよく、知り合いの税理士に受験時に選択した科目を聞くのですが、酒税法を選択した方はほとんど会ったことがありません。しかも、唯一と言って良い方は、代々続く杜氏の家系。酒造メーカーの経理担当者として家業を支え、まさに酒税が消費税に負けないくらい実務に直結する方でした(ちょっとできすぎた話ですが、実話です)。
所長からも「酒税法の選択禁止令」?
所長税理士の中には、税理士を目指す職員に、酒税法を選択することを禁止し、「取るとしたら消費税法」と限定している人もいるようです。酒税に限らず、こういった所長による科目のしばりは結構あるようで、ある職員は、「事務所が今後、相続・事業承継に力を入れる方針で、相続税法の選択を厳命されている。本当は苦手なんだけど・・」とぼやいていました。
ただ、その所長税理士は、試験を控えた職員の「定時上がり」や特別休暇、合格後の昇給など、職員の資格取得を積極的に推進し、独立した人も含め多くの税理士を輩出しています。職員が資格を取ることをよく思っていない所長も多いなか、この姿勢は特筆すべきことです。前出の職員も、所長への尊敬心は強く、「しばり」に苦笑しながらも、将来もその事務所で勤務税理士として働くイメージを抱いているようでした。
5科目合格制度、選択教科の多さという大きな特徴を持つ税理士試験。科目の選択一つとっても、色々な理由が有り、人間模様が見えてくるのが面白いところです。今年の夏も、受験者の数だけ、様々なドラマが展開されることになるのでしょう。