2013年8月27日掲載
先日、楽天の第二四半期決算説明会で、三木谷浩史社長は苦境が伝えられる同社の電子書籍事業「kobo」について、「今後利益を生むことができるビジネス」と自信を見せ、端末の販売等に積極的に取り組む意向を示しました。
現在、電子書籍ストアでは、Amazonのネット書店としての知名度も手伝い、Kindleが頭一つ抜けている印象がありますが、今後展開される電子書籍のトップシェアをかけた熾烈な争いが注目されるところです。
さて、士業で活動する人にとって、本は読むものであると同時に、書くもの。「いつかは本の著者に」との声はよく聞きます。そのようなニーズのある業界ですから、自費出版のエージェントからの「名刺代わりに本を出しませんか」との営業が昔からありましたが、電子書籍の普及により、その数は増えていると感じます。
私も、何度か電話営業を受けたことがあります。会の名簿を見ながら順番に電話をかけていると思われるのですが、「なぜ私にお声掛けいただいたのですか?」と聞いてみたところ「○○先生は今、最も勢いがあるとお聞きしましたので」との回答。あまりにフワフワした言葉に、思わず吹き出してしまったことがあります。
それはともかく、このような営業が増えた背景には、電子書籍により、自費出版のハードルが劇的に下がったことがあります。紙の本をエージェントの専属ライターや編集者を使って自費出版すると、200~300万円程度の費用がかかることがあるようですが、電子書籍であれば、数十万円で出せるそうです。紙の本のように印刷業者、取次業者とのつながりも必要でないため、新規参入のエージェントも続々登場しています。
そして、電子書籍であれば、業者すら通さず、ISBNコードを個人で取得し、自分でショップにアップするという方法(自力出版)もあります。
例えばKindle には、Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)があり、電子書籍を無料で、直接Kindleストアにアップできます。印税は、他サイトで発表を行わないなどの条件で登録する「KDPセレクト」での出版であれば、著者が70%を得ることができます。
KoboにもKDPと同様のKobo Writing Lifeというサービスがあるのですが、私が確認した範囲では、日本語のページがまだないようです。自力出版のしやすさという点でも、今のところKindleに分があるようです。
個人で出した書籍でも、ホームページにAmazon等のリンクを貼れば見栄えが良く、なかなかのブランディングになります。また、それなりの書籍ラインナップのある会社から出版しているということを見せるため、他士業者などの著者と合同会社(LLC)等の形態で別法人を作っている人もいます。今後は、自力出版を行う際に集めるチームとして、フリーライターや編集者と個人的に契約する士業者も増えてくるでしょう。
電子書籍の登場は、誰でも出版社を作れてしまうという、以前ではまったく考えられない状況を作り出しました。それにより、士業者の「作家活動」の様相も大きく変化していく兆しを感じます。