会計士、税理士の志望者の多くが会社や大学と並行して大手の資格予備校に通うダブルスクールに通っているが、通い始めた時に「財務では……が落とせない」「法人税法では○年に一度くらいの確率でここが問題に出る」といった話を、したり顔でする人と出くわしたことはないだろうか。一瞬、講師かと思いきや、話しかけてみると去年の試験に落ちた”ベテラン”受験生であったりする。初めての受験生であれば、ついつい先輩の話を参考にしたくなるものだが、ここである光景を思い出してほしい。
いま、あなたが会計士を目指す24歳の社会人受験生だとしよう。もし大学受験の時に一年浪人していたとしたら時計の針を5年巻き戻して、その頃の記憶を脳裏に浮かべてみる……。あなたはYゼミやK塾、S台といった予備校に通っている浪人生だ。あと10分で一限目が始まる午前10時。これから英文速読で有名な講師のA先生の講義が始まるから、教室へ向かおうとしている。すると……予備校の入口近くで煙草をふかしながら仲間たちと談笑している年増の三人の予備校生がいる。その中の1人がまくしたてるように何かを話していて、その中身があなたの耳にも届く。「早稲田の法学部の英作文の並べ替えは〇〇の熟語集の例文を覚えると解けるようになるぜ」「慶応文学部の英語長文を読みこなすには△△や□□の原書を読むのがいいらしい。英文科の先生が問題を作っているから的中するかもしれない」――。
こんな感じであなたが通っていたYゼミには、試験の傾向や問題集の選定などについて講師並みに詳しい「伝説の浪人生」がいたはず。しかし彼らは何年も浪人していたりする。実は国家資格の受験でも同様の事情らしい。公認会計士の平林亮子さんは仲間の会計士との共著「本当にわかる公認会計士の仕事」(日本実業出版社)の中で「学者タイプ」の受験生がいる、と指摘する。「もっと知識があれば…」という気持ちから「出題範囲外の部分まで勉強する」「理解よりも美しいノートを作成することについ徹してしまう」といった性分の受験生がそのタイプなのだそうだ。平林さんは専門学校のテキストを中心に、合格ラインを超えることを目的に勉強したという。要領よく、そして根気強い勉強で目標を遂げる「伝説の合格者」を目指したい。