「僕の報酬をバッサリ切らないといけなくなりましてね。法律の影響が予想以上に前期業績に響きました……」。中小企業の事業再生を請け負う会社社長がこう苦笑いする。
彼が指摘する「法律」とは、中小企業金融円滑化法だ。同法は2008年のリーマンショック後の景気対策で、中小企業の資金繰りを支援しようと国が制定。金融機関に対し、中小企業から融資返済の一時猶予など返済の負担軽減を依頼された場合に貸付け条件の変更などの努力を義務付けている。前述の社長のように、適切なコストカットを行って事業の立て直しを支援する立場からみれば、円滑化法で資金繰りに窮する企業が減り、仕事の機会が少なくなってしまったわけだ。しかし、この社長がおそらく”商機”に見ているのが来年3月の円滑化法終了後だ。過去2度に渡って延長された時限立法が失効することで、中小企業の倒産リスクが高まると懸念されている。
円滑化法終了後、中小企業は金融機関への信用力を高めておくことが重要になる。そこで税理士や会計士が貢献できるフィールドとして今後注目されそうなのが「会計参与」制度だ。2006年の会社法改正で新設された会社役員の一種で、税理士や会計士だけが就任できる。取締役と共同して貸借対照表や損益計算表などの計算書類を作成するほか、会計参与報告書の作成や、株主総会で株主の質問への回答などを担う。これまでの顧問税理士・会計士と異なるのは、会社の内部に回る点だ。顧問税理士・会計士は会社側で作った計算書類をチェックするが、会計参与になった税理士や会計士は会社側の人間として一緒に書類を作成する。そのため、「会計参与」がいる会社の計算書類は、金融機関の信用も良くなり、融資条件などで優遇措置を受けられる場合もある。
中小企業庁の「平成22年度中小企業の会計に関する実態調査」では、企業側が会計参与を設置した理由として「金融機関等に対する全般的な信用力を高めたい」が63%と最多を締めた。会計参与の内訳をみると、税理士は最多の51%で、税理士法人の19%と合わせると7割を占めた。公認会計士(28%)よりも活躍の機会に結び付けていることがうかがえる。一方、会計参与を導入済みの企業はまだ6%に過ぎず、「制度を知らなかった」企業は32%に上った。円滑化法終了を機に会計参与導入に動く企業が増える可能性がある。
税理士や会計士を目指す人が将来をイメージする時にも、中小企業をクライアントにした場合の働き方の一つとして会計参与に関する動向を意識しておく価値はあるだろう。
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