「ワイルドだろぉ」
2012年の流行語大賞の年間大賞は、お笑い芸人のスギちゃんの決め台詞が選出された。「iPS細胞」「第3極」「LCC」…今年の出来事を改めて思い出させる言葉とともにトップテンにランクインしたのが「終活」だ。
ネーミング自体は就職活動の略語「就活」に語呂合わせした感があるが、その定義は「人生の最期を自分の望むように自分で準備すること」(ユーキャン新語流行語大賞サイト)。受賞者は、流通ジャーナリストの故・金子哲雄さんと週刊朝日編集部が選ばれた。金子さんは以前、会計トピックスのコラムでも紹介したように死期を悟ってから通夜・葬儀・告別式、お墓を周到に用意し世間を驚かせた。週刊朝日は3年前に「現代終活事情」と題した連載記事を企画していち早く「終活」模様を取り上げたことで受賞となった。
「終活」は、自分の葬儀が滞りなく行われるように準備するだけではない。60歳以上の世帯が金融資産の6割、有価証券の7割を保有する中で、自分の死後、遺産相続が遺族間でもめることなくスムーズになるように努めることも重要だ。しかし、世界屈指のスピードで高齢化が進む日本社会。国税庁統計(2008年)で50兆円規模とされる相続市場は、2020年までに60兆円に向かって伸びていく見通しだ(2010年、野村資本市場研究所推計)。政府も高齢化を見越し、相続税をさらに”取り立てる”方向で法改正に動き出している。現行制度では、課税対象にならない控除部分は、例えば親子4人の家族で父親が死亡したケースなら定額控除の5,000万円プラス1,000万円×3人分(=計8,000万円)。しかし今後、相続税の改正法案が成立した場合、定額控除が3,000万円プラス600万円×3人分(=計4,800万円)と大幅に減額される見通しだ。
相続争いといえば、「お金持ちの家の話でしょ?」と他人事に思いがちだが、高齢化と連動するようにトラブルが増えている。司法統計では、2010年に家庭裁判所で取り扱った遺産分割事件の約4分の3は遺産額5,000万円以下と定額控除の範囲内だった。特にお金と違って分割できない実家の家屋を誰が引き取るのかはよく火種になるという。こうした社会背景を受け、民間企業では、「高齢化社会をにらみ、富裕層向けが中心だった相続支援サービスに顧客の幅を広げる動きがでてきた」(2012年8月14日 日経新聞夕刊一面)。同記事では、相続財産の調査、自筆証書遺言の作成などを税理士や弁護士、社会保険労務士などが支援する人事・労務コンサルタント会社の事業や、遺産の受取人や使い道を指定できる信託銀行の資産管理サービスなどが紹介されている。
税理士の志望者なら”高齢化”や”相続増税”の社会動向には注目しておきたい。将来の実務を視野に、試験の選択科目で「相続税法」を勉強するのは実践的かもしれない。