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【シリーズ 資格プラス@】第9回 新聞のウラを読む ~会計基準の記事から~

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穏やかな週末の朝。昼近くまでうたた寝をしている人も多いだろう。しかし、その朝刊の見出しを見るや、眠気が吹き飛んだ経営者や会計士がいるかもしれない。

「企業を抜き打ち監査」―。日経新聞が2012年12月8日、金融庁が検討中の新しい会計監査基準の原案を一面で報じた。新基準が来年度から施行されれば、監査法人は不正会計の疑いのある企業に対し抜き打ちでの監査を求められるようになる。また、監査法人を交代する際には企業の会計上の問題点について詳細な説明が義務付けられることとなる。新基準が検討されてきた背景は、オリンパスや大王製紙などの不祥事がある。ただ、この新基準が狙い通りに運用されるか課題も多いようだ。日経も朝刊5面の解説記事で補足しているように、会計士には強制的に調査する権限はなく、顧客として契約している監査先企業との関係を気遣わざるを得ない現実がある。企業側にとっても抜き打ち監査のプレッシャーが強まる。新基準が監査の現場で実効性を持つかは、まだまだ課題があるだろう。

さて、眠気が吹っ飛んだのは経営者や会計士だけではない。監査基準の抜本改正が実現すれば11年ぶりとあって、ニュース性の高い話だ。この記事は日経新聞のスクープ。新聞各社は午前3時ごろには各紙交換といって互いの記事を確認しあう業界慣例があり、他の新聞社の金融庁担当記者は未明に叩き起こされただろう。共同通信は早速その午前中に追いかけて、後追い報道していた。

朝刊の一面に掲載される情報は、前日までに取材した話で新聞社が、ニュース性が高いと判断したものだ。大事件や著名人の死去のように、各紙が横並びになる場合もあるが、何よりも優先されるのは「スクープ」。自社の記者たちが夜討ち朝駆けを重ねて取材対象に食い込み、世間の誰よりも先駆けて取ってきたインサイダー情報を発信する。読者としては、世の中の水面下で何が起きているかをいち早く知ることができるメリットでもある。

しかし、ここで見過ごしてならないのは、記者たちに情報を提供(リーク)しているサイドの”思惑”だ。今回の監査基準はまだ「原案」であって決定事項ではない。なぜ、「検討中」のものが新聞で大々的に報じられているのか。政治家や官僚が記者会見を開く前に、わざわざ新聞記者を使って世の中にインサイダー情報を知らせようとするのは、必ず理由がある。

「アドバルーン」という言葉がある。広告気球や観測気球のことだが、朝日新聞社の「知恵蔵2009」を引くと、「転じて、世論の反応をみるための試案」とも付け加えている。先述したように新しい監査基準は、会計士、企業側双方に新たな負担もある。おそらく日経の記者に特ダネをもたらしたのは金融庁関係者で思惑があるはず―。そんな感じで新聞記事の情報の裏を読み取れるようになると、より精度の高い意思決定が可能になる。会計士を目指す方々や、若手会計士の方々には、世の中に出てきた情報の背景について深く考える「リテラシー」を身につけていただければと思う。

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