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【コラム】 安倍政権誕生で税務・会計への影響は?

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2012年の総選挙は自民党が294議席を獲得する圧勝に終わった。公明党と合わせた議席数は325。参院で法案が否決された場合でも衆院で再可決して成立させることが可能となり、新年は巨大勢力を確保した自公連立政権の誕生により「決められない政治」からの脱却が進みそうだ。

マーケティングで「PEST」という用語がある。企業が外部環境を分析する際、P(政治)、E(経済)、S(社会)、T(技術)という4つのカテゴリーからマクロの視点で分析するフレームワークだ。税理士や会計士にとっても、世の中の動きがクライアント企業にどのような影響を与えるのか、あるいは自分たちの業務にどう反映してくるのか、先を読んでおかなければならない。その際、頭を整理する上でPEST分析は有効になる。

今回の政権交代をPEST分析すると、税理士や会計士の仕事にどのような影響があるだろうか。投票前に行った世論調査では、報道各社のいずれも有権者が最重点に挙げたのが「景気対策」だ。郵政民営化の是非を問うた2005年、あるいは政権交代そのものが争点になった2009年と違い、今回の総選挙は「P」と「E」がかなり密接に絡んでいるといえる。

年内にも首相の座に返り咲く見通しの自民党・安倍総裁は、企業収益悪化の元凶であるデフレ経済を克服するため、政権公約で日銀にかなりの注文を付ける大胆な金融緩和策を掲げた。簡単に言うと、世の中にお金を増やして景気を刺激し、物価を上げるために様々な手段を打って行くというもので、具体的に2%の物価上昇率の目標(インフレターゲット)を定める方向だ。物価が上がると同時に近年、過剰に進んでいた円高も落ち着くのではないか…安倍氏の構想は一部で「アベノミクス」と呼ばれるような期待感を集めており、総選挙翌日には、自民圧勝を好感したマーケットで早速、株高・円安に動いた。

円安になれば、輸出産業にとっては進出先でモノを売りやすくなる。昨今、あまりに円高が進んでいたため、企業は、せっかく外国で売り上げたお金を円に切り替える際に余計な損を強いられていた。例えばある商品を売り出した段階で1ドル=100円だったのに、売り上げ後に円に切り替える際、90円と円高が進んでいれば10円の損をする。こういう損失は決算の際、営業外費用の中で「為替差損」として計上。損金として課税所得に反映される。トヨタ自動車のような大企業が円高で大損をしたニュースがよく流れるが、もし、あなたが会計士や税理士でアジア市場を相手に輸出する町工場を担当すれば、監査や申告の際、為替変動に対応しなければならない。一方、逆に海外から仕入れをしている会社を担当する場合は、円安に振れた場合、出費がかさむ分、業績に懸念材料が出てくる。

「アベノミクス」を巡っては、経済の専門家の間でも実効性を巡って評価は分かれている。会計士や税理士の実務では、企業業績の結果としての「過去」の数字を取り扱うが、経営コンサルの仕事も請け負っている場合は、「未来」も多少予測する必要がある。各自でPEST分析をしながら、世の中の動向を見極めておきたい。

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