いまや「海猿」といえば、勇敢な海上保安官だという認識は世の中に定着した感がある。
10月中旬、新任の海上保安官を育成する京都・舞鶴の海上保安学校の入学式の模様がNHKニュースで報じられた。春と秋の年2回行う入学試験の申込者は増加傾向で、今年は春と秋を合わせて約1万6千人と過去最多に上ったという。若者たちの注目を集めたきっかけは、あの大ヒット映画の影響に違いないが、近年の沖縄・尖閣諸島を巡る問題で海保の活躍ぶりがクローズアップされたこともあるだろう。さらに海上保安庁では、雇用情勢の悪化による「公務員志向」も志願者増加の背景にあるとみているようだ。
確かに日本では、若者の公務員志向は根強い。人材関連企業のレジェンダ・コーポレーション株式会社が2012年4月、来春の就職を目指す大学生・院生721人を対象に行った調査では、「公務員になりたいと思ったことがある」が51.9%。その理由として1番目が「長く勤められる」(42.5%)、2番目も「リストラされない」(37.7%)と”安定志向”を強くうかがわせたが、それに続いたのが「国・地域に貢献できる」(33.7%)だった。実は中央省庁の場合、弁護士や公認会計士といった資格取得者は任期付職員法により、期限付きの採用を行っている。例えば、会計士の場合は財務省で財務書類の作成を担当する。官庁側は、そうした人材が民間での知見を生かすことも期待しており、監査法人で民間企業相手の業務を行った経験を元に、企業会計の貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)のノウハウを使って、国の資産や借金を分かりやすくする資料づくりも行われている。
大手監査法人では、中央省庁や地方自治体、独立行政法人などの財務・会計を手掛ける仕事も行っている。省庁や地方自治体は会計基準も決算発表も民間と違うため、この分野に精通すると、業界内でも「公会計」に強い専門家としてのポジションを確立できる。消費増税や復興予算の流用問題など、公的機関のお金の使い道に注ぐ国民の眼差しは厳しくなるばかりだ。会計士として自らの知識や経験を生かし、国や地域、国民に貢献する仕事のやりがいは大きい。