これも「アベノミクス」効果というべきなのか。
株高・円安と並行して、自民党政権による企業支援策の構想が次々に明らかになっている。特に企業に対する法人税の軽減に力を入れるもので、会計士や税理士にとってはクライアント企業の業績を大きく左右するだけに、法人税を巡る連日の報道は常に注意を払っていることだろう。
安倍政権が法人減税に力を入れるのは、デフレ脱却・消費税率を引き上げる前の景気浮揚策というだけではない。もともと日本は国際的に法人税が高いと指摘され、民主党政権の時代でも引き下げられていた。企業のグローバル化にあって各国は企業誘致のため、法人税の「引き下げ競争」が繰り広げられている。国と地方への支払い分を合わせた法人税の実効税率でいえば、日本は約35%。一方、電機メーカーが絶好調のお隣・韓国(ソウル)は20%台半ばで、金融・知財での立国を戦略にしているシンガポールに至っては18%程だ。ただでさえ、この何年かで国際競争力を欠いてきた日本企業の復活を手助けするために法人税の負担を減らすことは成長戦略に欠かせない。
自民党政権ではさらに雇用対策として従業員の給与を上げた企業の法人税について、支払増加分の10%を納税額から差し引く方針だ。雇用を増やした企業にも、一定数以上雇った場合、1人分に付き20万円を法人税から控除する措置にも乗り出すという。永田町界隈では、7月の参院選で自民党が勝利して「ねじれ国会」を解消するため、安倍首相は、5月のGDP発表で一定の成果を出すことを強く意識している、とささやかれている。今後も企業に対する税制の優遇措置が続く可能性が高い。
法人税引き下げで得をするのは、グローバル化に直面している大企業ばかりではない。政府が成長戦略で産業創出、起業促進を進める中、法人税などで優遇すれば、ベンチャーで事業を始める動きも活発になるだろう。さらには現在、個人事業で、ある程度の収入を得ている人も法人化に舵を切るはずだ。会計士や税理士にとっては、同じ個人経営でも個人事業主より法人の方が各種手数料を高く取れるのが一般的。法人のクライアントが増えれば、ビジネスチャンスになるわけだ。
実際、戦後日本の企業社会の発展期を支えてきた団塊世代を始めとするシニアが、退職後に自らの経験や技術を生かして起業する動きが増えている。55歳以上を対象に融資する日本政策金融公庫の「シニア起業基金」で創業後1年までの利用件数は、2012年4~9月で616件。これは前年の同じ時期に比べ11%増えたという(2013年1月15日 読売新聞)。法人減税などの優遇措置が取られればシニア世代の起業、法人化も活発になるはず。「小さな会社」のクライアントが増える流れにあると言える。