確定申告のシーズン到来だ。 現役の税理士は、一年の中で最もめまぐるしくなる時期である。少ない人数でやり繰りしている税理士事務所の場合、激務の余り、一人が倒れるとドミノ倒しで他の人にしわ寄せが行きかねないので、最近は通勤の負担を減らそうとホテル代を負担するところもあるそうだ。
さて税理士を志望している人でも、現在は会社勤めをしているなら給与所得者になるので基本的にはわざわざ税務署に行く必要はない。申告のシーズンに芸能人がパソコンを操作して「e-Tax」の利用を呼び掛ける模様をテレビで見て他人事に感じる人もいるだろう。
会社員でも確定申告に行くケースはある。まずは2,000万円を超える高所得者。しかし、サラリーマンの身分でこの金額をもらえる人はあまりいないだろう。次に注意したいのは株など金融商品の取引や副業で一儲けした場合だ。一般的な収入額があるサラリーマンでも20万円を超える副収入があるなら申告が必要だ。「アベノミクス」への期待で昨年末から続く円安・株高。あるネット証券では今年1月の口座開設の数が前月の倍になったといい、今後株取引を始める人が増えるかもしれない。
「いや、俺は株もFXもやらないし…」という方も多いだろうが、医療費控除ならもっと身近な問題だ。不幸にして去年、入院した経験でもあれば、それなりの金額がかかっていたはず。しばしば「10万円を超えたら申告した方がいい」と耳にする。控除を申請すれば、200万円を最高に、支払った医療費から、保険金で補填された額プラス10万円を引いた額が対象となり、一部の金額が還付される。
ところで、医療費控除の還付金を含め、税務署から戻ってきたお金はどう使われているのか。「友達との飲み代に使う」「今月の赤字の穴埋めに回す(泣)」など人によってそれぞれだろうが、実は、還付金の「行方」を探った調査は極めて珍しい。そんな中、日経新聞が昨年、年末調整と確定申告における還付金の使い道をアンケート調査している。
それによると、「消費に回す」が41%、「貯蓄に回す」が37%とほぼ拮抗。「赤字補てんに回す」は22%だった。回答者の声を見ると、「消費派」は、「妻との約束で、還付された税は全額自分の小遣いにしている」(50代男性)というラッキーな人もいれば、「予期しない『臨時収入』は消費に使うのが世のため」(40代男性)とデフレ脱却に心強い意見も。一方、「貯蓄派」は、「使う予定が決まっていない」(60代男性)という何となく貯める意識もあれば、「これからも収入が減っていく可能性が高い」と切実なものもあった。消費増税や年金受給開始年齢の引き上げなど将来不安はまだまだ強いといえる。
ただ、このアンケートが実施されたのは昨年11月。円安・株高による景気回復の期待感が湧く前のことだ。ここにきて、自動車など輸出産業は業績の回復見通しが出てきている。確定申告の期間が終われば花見シーズン目前。還付金を当てにできる人は明るく楽しく仲間と飲むことで景気回復に貢献してもいいのではないか。