いよいよ春本番。引っ越しシーズンになりました。「本社勤務で東京に異動するからマンションを買おうかな」という方もいらっしゃるでしょう。
さて、マイホームの購入時にほとんどの人が利用しているのが住宅ローン控除です。現行一般住宅の場合、10年間、年末のローン残高の1%、年20万円を限度に所得税・住民税額から控除することができます。
このほど発表された2013年の税制改正大綱には、同制度の拡充が盛り込まれています。2014年4月以降2017年12月までに購入、入居した一般住宅の場合、控除額は年20万円から40万円(10年間最大400万円)、末永く利用できる「認定長期優良住宅」、二酸化炭素の排出量を減らした「低酸素住宅」は年30万から50万円にアップします。
今回の住宅ローン控除の拡充は、消費税率引き上げによる需要の落ち込みをやわらげる狙いで実施されるものです。控除額のアップについては、住宅にかかる消費税率が 8%または 10%になった場合というただし書きがあります。消費税率は2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げられる方針です。
住宅ローン控除で注意すべき点として、税額が控除額よりも低い場合にメリットを最大限に享受することができないことがあります。現行、所得税で控除しきれない税額については、住民税から年間9万7500万円まで控除できますが、今回の改正では、消費税率がアップした場合、この控除額が13万6500円に拡大されます。そして、それでも引ききれない金額については、今夏までに給付措置などで手当する方針です。
整理すると、消費税アップにかかる負担増は、住宅ローン控除の拡充、給付措置などである程度緩和されることになります。ただし、消費税率8%が10%にアップすると、控除額が変わらないため、メリットは小さくなります。
消費税率の引き上げについては、景気の先行き不透明感もあり、今後の国会でも激しい論戦が予想されます。8%への引き上げが行われたあとも、10%への引き上げ時には再び議論が巻き起こることは想像に難くありません。税率引き上げについては予想が立ちにくい状況です。
住宅メーカーや不動産業者からは、消費税引き上げ前の住宅購入が有利であるとの「セールストーク」が展開され、確かに一定の説得力を持っています。しかし、引き上げを見越した駆け込み需要により、現在不動産価格が高騰しつつあるという情報があることも見逃せません。また、アベノミクスによるインフレ効果で「バブルの再来」を予測するエコノミストもいます。
住宅購入時期の有利・不利に関しては、自身の税額と控除額の大小、税制の行方、物件価格が複雑に関係します。また、支払うお金の額と、後々戻ってくるお金の価値、いわゆる「キャッシュ・フロー」をどれほど重視するかによっても損得勘定は異なってきます。大雑把な議論に惑わされず、自身にとって本当にメリットがある購入時期はいつなのかを検討する必要があるでしょう。