先日、ユニークなランキングが発表されていた。 「変わり者弁護士役がハマる俳優ランキング」。NTTドコモが集計し、検索サービスの「goo」で紹介されていたのだが、1位は堺雅人さん。昨年4月クールで平均12%の視聴率だった「リーガル・ハイ」(フジテレビ系)でのトリッキーな弁護士役が印象に残った影響があるのだろう。2位は阿部寛さん、3位は「嵐」の大野智さん――という具合に続いた。今回のランキングには20位までに女性は入っていなかったが、2007年に「弁護士役が似合う有名人」で尋ねたアンケートでは、天海祐希さんがトップに躍り出た。やはり、その数年前に「離婚弁護士」(フジテレビ系)で主演だった影響があるのだろう。
弁護士や医師に比べると、同じ国家資格でありながら会計士や税理士はテレビドラマで取り上げられることが少ない。4つの資格を人数でみると、医師は29万人と断トツに多いものの、弁護士は3万人だから、会計士(2万4千人)、税理士(7万人超)と比べて特別に数に違いがあるわけではない。
テレビドラマとなると、視聴者がイメージしやすい題材が選ばれるからだろうか。弁護士であれば、刑事裁判で被告人を逆転無罪に導くまでの過程をサスペンスで描いたり、医師であれば、ゴッドハンドを持つ主人公が難しい手術で瀕死の患者を助けたりといった「見せ場」が作りやすい。これに対し、会計士や税理士だと、数字を相手にした日常業務をそのままドラマにするのは難しい。
とはいえ、2時間サスペンスドラマを見ていると、主人公が刑事以外でも様々な職業が活躍している。探偵や新聞記者、時には客室乗務員や家政婦、はてはOLなど普通の人たちが本職の刑事顔負けの推理と行動で事件を解決する。ドラマはどんな職業を取り上げるにしろ、主人公が試練に立ち向かったり、登場人物同士の確執があったりと人間臭さが求められる。
実際、会計士や税理士を主人公にした作品は数こそ少ないが存在する。 近年では、NHKで「監査法人」が制作された。塚本高史さんと松下奈緒さんが若手会計士を演じ、粉飾決算などを巡る人間模様を描いた。映画「不撓不屈」は国税当局の“陰湿”な税務調査と闘った実在の税理士を滝田栄さんが演じた。
要は切り口、企画次第で何とでもなる。サスペンスで犯人役を主人公にするとむしろ面白いように、視点を切り替えることで新鮮味は出せる。昨年末にヒットした「ドクターX」(テレビ朝日系)で主人公のスーパー外科医を演じた米倉涼子さんは、「ナサケの女」(同)で国税局査察官にも扮したが、逆に彼女が、税務当局とタフに渡り合う、型破りな税理士を演じると面白いストーリーになるはず。硬派なタッチであれば、天海祐希さんや吉瀬美智子さんもいい。宮藤官九郎さん脚本のようなコミカル路線で行くなら、吉高由里子さんやローラさんが演じる新人税理士と絡ませると型破りなドラマで楽しめそうだ。
テレビドラマはその職業や業界のPRになる。社会的に仕事内容が広く知られると、顧客にもっと理解してもらえるだろうし、志望者も増えるはず。業界を挙げてもう少しドラマなどで取り上げられるように働きかけてもいいのではないか。