近年、航空業界の話題で頻繁に聞かれるようになった言葉に「LCC(格安航空会社)」があります。国際エアラインの乗り入れ、国内便の整備も進み、使い勝手は向上しているようです。夏休みの帰省・旅行に、LCCの利用を予定される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
LCCが格安の航空便を提供するために、様々なコストカット策を行っていることはよく知られています。具体的内容は各社異なりますが、主なものとしては、飛行機の機種統一、機内サービスの有料化、チケットのネットでの直接販売、座席の省スペース化などが挙げられます。
税理士業務でも、徹底したコストカットにより税務顧問を低価格で提供する事務所が増えてきました。月1万円を下回る顧問料を売りに、積極的にインターネット等で広告を出す事務所の存在はご存知の方も多いでしょう。
コストカットの手法も、LCCと似ています。オプションのサービスを切り分けて基本となるサービスを絞込むことや、会計業務をネット上でなるべく完結させ、訪問などの数を減らすことで、一人ひとりの顧客にかける業務を少なく、また定型化しているのです。
低価格を打ち出す税理士に対して、ベテランの先生方から、厳しい口調で否定的な発言が聞かれることがありますが、私は必ずしもこういった声には与しません。厳しい会計業務のマーケットで、価格を抑えることで差別化する業態自体を否定するべきではないでしょう。
ところで、先ごろ独立行政法人国民生活センターが、同センターに寄せられたLCC関連の苦情の内容について公表しました。そのトラブルの中で気になるのは「広告表示の運賃だけでは利用できない」という事例。必ず発生する手数料などの義務的な料金が具体的に示されていない例があり「運賃額だけが独り歩きしている」との指摘がなされています。
税理士業務も「顧問料だけが独り歩きしている」ことになってはならないでしょう。長らく、顧問契約は会計上発生する様々なニーズに包括的に対応してきました。低価格で関与する顧問先から「顧問契約であれば当然このサービスは含まれると思っていた」といった類のクレームが発生することは十分に考えられます。
税理士としてみれば「この値段でそんなことまでできるわけがない」と言いたいことも多いでしょう。しかし、低価格を打ち出すのであれば、その料金で何ができるのか、できないのかという説明は必須です。むしろ「できないこと」を強調する姿勢こそトラブルを防ぐことになるでしょう。
税理士の報酬や広告が自由化されたこともあり、会計事務所の経営にもビジネス感覚が必要であると、当たり前に言われるようになってきました。コストカットと低料金化という「企業努力」を、自信を持って、まっとうなものであると主張できるビジネスモデルを作り上げたいものです。