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【会計士Xの裏帳簿】TPPでさらに注目、会計人の農業経営支援

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TPP交渉が開始されました。日本においてTPPの利害関係者として象徴的な存在となっているのが農家。コメなどの「聖域」に関する交渉の行方や、農作物がグローバルな市場原理にさらされることのプラス面・マイナス面について、議論は百出しています。

農業は土地に限定される性格を持ち、生産性を上げることに限界があります。天候による不作も避けられません。食料の安全保障、農村の景観の維持等の観点からも、輸入品、あるいは国内の他の産業との競争を無制限に行うべきものではないでしょう。

しかし、TPP交渉がどう進もうと、以前から農業経営の効率化の必要性は指摘されており、今後その傾向が強くなるのは避けられません。そして、会計士・税理士が専門家として農業のサポートを行うとすれば、この「ビジネスとしての農業」への支援となるといえます。

例えば個人農家が、農業生産法人の設立をする動機は、ほかの業種で個人事業を法人化する理由とかなり似ています。税理士として、所得税と法人税の税額、繰越控除のメリット、給与の損金算入などを勘案して、適否をアドバイスする事ができるでしょう。

記帳代行・指導も重要です。現実的に、複式簿記の帳簿をつけている農家は少ないとも言われています。農業簿記には特殊性はあるものの、会計人であればそれほど難しいものではありません。原価計算や、損益分岐点の考え方を導入することで、経営の健全性を「見える化」させることもできます。

新規に農業を始める個人、企業に対するサポートも考えられます。農地の賃借などには農地法の知識が必須となりますので、場合によっては農業委員会への申請を代理することができる行政書士として登録することも検討対象となるでしょう。

農地法以外にも、補助金や助成金の受給、農業従事者への各金融機関の融資制度、機械の購入やリース・レンタルといった農業経営に必須の知識はあります。また、「攻め」の経営として、販路の拡大、加工や小売りなど経営多角化についてのアドバイスも需要がありそうです。

農業は高齢化が激しい業種であり、相続や事業承継についても税務の知識が生かせる分野です。以前聞いた話では、農家が長く所得税申告を任せていた顧問税理士に相続税の相談をした際、セカンドオピニオンとして資産税専門の税理士の意見を求めたところ、全体の財産評価額が半分ほどになったそうです。

農家は、かねてより業界団体から税理士を紹介されることが多い業種です。しかし、農家が経営についての方策を自覚的に探るようになれば、ネットや専門誌などの情報で農業ビジネスに強い会計人を選ぶ動きが盛んになるかもしれません。

私の周りの、特に若い税理士の中には、農家の関与先を持つことに興味を持ちながら参入の仕方がわからないという方が、かなり多くいます。このような「うずうずしている」層の会計人と、新しい価値観を持つ農業経営者がタッグを組むことで、イノベーションが生まれることを期待したいものです。

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