法律上の婚姻関係にない男女間の子(非嫡出子)の相続分を、嫡出子の2分の1とする民法900条4号の規定を違憲とする最高裁判決が出ました。今後国会で、法改正に関する審議が行われる見通しです。
家督相続などに表れる「家制度」があった明治時代に起源を持ち、両親が法律的な結婚をしているか否かで子の権利に差をつける同規定が、個人の権利を尊重し、「法の下の平等」を掲げる、現行の日本国憲法に反するものであるとの判決となりました。
民法改正により、法定相続の割合が変わることになりますので、当然、相続業務を行う会計人も注視しておかなければならない判決です。実務において、どのような変化があるかということを確認しておく必要があります。
相続業務では「相続人の特定」という作業で非嫡出子の存在を調査します。これは、亡くなった方(被相続人)の戸籍謄本を、出生時からすべて取得して、法定相続人が誰であるのかを確認するものです。
転籍などで本籍地が変わり、新たに戸籍が作成された場合、男性が前の本籍地にある時に認知した非嫡出子は、新しい戸籍には記載されません。被相続人の戸籍を出生時まで遡る必要があるのはそのためです。転籍を繰り返している人の戸籍を辿ってみたところ、家族に打ち明けていなかった子の存在が分かることもあります。
民法が改正されたとしても、今まで相続業務において行っていた相続人の確定、法定相続分の額を計算するという作業そのものに変化はありません。注意すべきことは、非嫡出子の法定相続分の計算を間違えないことくらいでしょう。
今回の改正でニーズが増すのは、被相続人が生前に行う「遺言」だと思います。非嫡出子に嫡出子よりも多く財産を遺したい場合は従来から遺言が必要でしたが、今後は、嫡出子に多くの財産を遺したいと考える場合も、同様に遺言が必要となります。
もともと法定相続分は、遺言がない場合の補充的な存在ですが、法律で「上から」与えられる格差がなくなることで、被相続人の遺言による意思はより強調されることになります。
会計人の役割としては、まず今回の法改正の意義について啓発することが挙げられます。そして、生前に非嫡出子の相続に関する相談を受けた際は、法定相続分の変更について、特に遺留分の存在を適切に説明し、各相続人に相続させる財産の種類、額などについての意思を遺言書に反映させるためのアドバイスを行うことが求められるでしょう。