年齢とともに「正面突破」は困難に
税理士試験の合格者発表が間近に迫ってきましたが、晴れて合格を果たした方が考えなければならないのが、試験合格者としての次の一手。会計事務所に勤務している方であれば、勤務税理士としてのキャリアアップ、独立等、可能性は広がります。
税理士事務所での求人活動も活発化してくると思われますが、ここで問題となるのが、ある程度の年齢で、一般企業に勤めながら試験に合格したものの、会計の実務経験がない方の就職・転職です。
カイケイ・ファンのコラム「会計業界の転職、35歳を超えたら転職は無理?」は非常に興味深い内容です。私は会計人の就職・転職事情を広く俯瞰して見ることのできる立場ではありませんが、頷ける記述があります。
この記事では、20代であれば会計業務の経験がなくてもポテンシャル採用が期待できるものの、30代になると未経験者はかなり厳しくなることが指摘されています。これは、採用する側の所長税理士の先生方とお話していてもよく聞く話です。
「即戦力」という視点で見れば、実務経験がない試験合格者よりも、試験は合格していなくても会計の経験を数年積んだ人のほうが採用しやすいという状況は、現実としてあります。
人材ニーズを掘り起こすアピールを
未経験の方が会計業界への転職を考える場合は、正面突破ではなく「からめ手」から攻めるような戦略が必要となりそうです。
その際に重要となるのは「前職を魅力的に語ること」だと思います。例えば、元銀行マンであれば、会計業界でニーズがある融資交渉の勘所を知っていることをアピールできるでしょう。保険や不動産業界なども、スキルとしてアピールする部分はあると思います。
私の知り合いの税理士に、自動車の営業マンとして10年程度勤め、30を過ぎて税理士試験に合格された方がいます。就職には苦労もあったようですが、小規模な税理士事務所に「営業の力を期待して(と本当に所長から言われた)」採用が決まったそうです。
大手の税理士法人では、組織が専門分化していますので、それぞれの部署において会計を含めた豊富な経験者を求めます。しかし小さな事務所、これから伸びていく税理士事務所は組織が未分化。確立した業種に必要な人を集めるのではなく、職員が持つスキルから新たな事業展開を模索するという考え方をする傾向があります。
そのような詳細な人材ニーズの情報は、求人広告にはなかなか出てきません。むしろ採用担当者が気づいていない需要を掘り起こすアピールをすることで初めて採用が実現します。求職者のスキル、希望と採用担当者のニーズを詳細に聞き取るエージェントを活用することも検討する必要があると思われます。