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【コラム】「年収1000万円」受難の時代

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サラリーマンの3%が対象

「タレントの高額所得を取り上げる前に高額納税者だと知れ。」
ダウンタウンの松本人志さんが12月8日、ツイッターでこのような発言をしてネット上で話題になった。真意は不明だが、タレントの収入額ばかりが芸能メディアでクローズアップされ、納税で“社会貢献”している側面が忘れられがちなところに不満だったとみられる。数日でリツイート数は2000を超える反響を呼び、批判的なレスも多く、ネット上はたちまち炎上。著名人の懐事情への関心は相変わらず高い。

「松ちゃん」クラスの超高額所得者が身内や友人にいる人は少ないだろうが、もう少し庶民レベルに話を落としてみる。ビジネス誌やマネープラン誌、ライフスタイル誌を眺めていると、サラリーマンの世界では年収1000万円がステータスとして一つの区切りに位置付けられている。国税庁の「民間給与実態統計調査結果」(2012年)によると、1000万円以上を稼ぐ会社員は172万人で全体の3.8%。大手の金融機関や商社、テレビ局あたりの勤め人を彷彿とさせる希少な存在だ。若者のキャリア問題に詳しい知人のジャーナリストは「リスクの低いサラリーマンがミドルリターンを得られるのはおかしい。米国のように、大手のサラリーマンはもっと起業するべきだ」と不満たらたらなのだが、家族を抱えているとなると、簡単なことではない。

ちょいわるおやじに憧れ!?

しかし、そんなおいしい1000万円プレーヤーも安穏としていられなくなりそうだ。政府は2014年度の税制改正で、「年収1000万円を超える会社員の給与所得控除を2017年から縮小し、税負担を重くする方針を固めた」というのだ(2013年12月10日・日経新聞)。消費税や復興特別税なども含め、大増税の時代に入りつつある中で、比較的恵まれていた「エリートサラリーマン」も生活防衛を真剣に考えねばならなくなる。ところが、1000万円前後の収入を得ている層ほど、ついつい背伸びをしてハイソな人たちに近い消費行動をとる傾向がよく指摘される。

一昔前、「LEON」という男性向けファッション誌が一世を風靡した。イタリア人タレントのパンツェッタ・ジローラモさんをモデルに起用し、「ちょいワルおやじ」の流行語で話題になったのを覚えている人も多いだろう。あの雑誌は年収2000万円のライフスタイルを発信していたが、もちろん当該の年収を得ている層はほんの一握り。実際は年収800万円あたりも視野に入れ、「憧れ」を喚起して高級ブランド品をプロモートする戦略だったとされる。もちろん、プライベートで趣味に費やすお金だけでなく、仕事の付き合いで高い飲食店で接待をする必要があるなど、営業経費もそれなりにかかるという人も多い。

また、教育費のように切実な出費もある。都心部に住んでしまった1000万円プレーヤーは、子どもも私立の名門校に通わせたいと思うのが親心。ただ、そのクラスの年収だと奨学金等の対象にならない場合が多いことも指摘したい。たとえば民主党政権で導入された高校無償化の制度。政権を奪回した自民党が制度を見直し、2014年度から所得制限がかかる。その基準は年収910万円以上。まさに1000万円プレーヤーが対象だ。

税理士+FPが頼り

年収1000万円前後の層は、サラリーマンとセレブの「端境」にある中途半端な立ち位置なので、お金の使い方は下位層より高い意識を持っていないと思わぬ苦労をすることになる。今回のコラムはあまりオチがなくて申し訳ないが、この層が生活防衛をしっかりするには、自分がサラリーマンであることを自覚して、足元のお金の使い方をきっちり見直すことが一歩目であろう。確定申告が義務化して税理士に相談でもするようになれば、その意識が芽生えるだろうが、こういうとき、ファイナンシャルプランナーも取得している税理士がいると心強い。

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(文/新田哲史=コラムニスト、記事提供/株式会社エスタイル)

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